クサレダマ(草連玉)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

クサレダマ(草連玉) サクラソウ科オカトラノオ属
学名:Lysimachia vulgaris L. var. davurica

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■特徴・分布・生育環境
「クサレダマ」とは変わった名前ですが、「草連玉」でサクラソウ科の多年草です。
花序(花のつきかた)や草姿は全く似ていませんが、多摩丘陵などでよく見かけるオカトラノオの仲間です。

サクラソウ科の植物は、サクラソウの仲間(サクラソウ属)を除くと、個々の花をよく見れば似ているのですが、花序(花のつきかた:花穂の見た目)などがかなり違うので仲間とは思えないところがあります。

日当たりのある湿性地に自生する多年草です。
茎をほぼ直立させて、花時には草丈50〜70cmほどになります。

花期は、しばしば7〜8月とされますが、多摩丘陵では6月末〜7月です。

6月中旬には茎頂に円錐塔状の花穂(花序)を出して、黄色の花を数多くつけます。
花冠は5裂していますが基部まで裂けているので5枚の花弁からなっているように見えます。
花径は1.5cmほどで、花被片は楕円形です。
葉は、長さ5〜10cmほどで、葉先が鋭三角形状の披針形〜広披針形です。
果実はとても小さく、径4〜5mmの偏球形です。

日本各地から北東アジアに分布します。
多摩丘陵では、自生は稀で個体数は少ない。
もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏によって、ある谷戸奥での自生が確認されています。
また、2ヶ所ほどの里山公園で保全されています。

■名前の由来
江戸時代に渡来したマメ科の低木「レダマ(連玉)」に似ていて草本であるという命名とするのが一般的です。
しかし、花色が黄色であることを除けば花の形態や花序の様子もかなり違います。

■文化的背景・利用
知られた詩歌や文芸などにその名は現れていないようです。
江戸時代の本草書などにその名が現れているとされます。

■食・毒・薬
有毒であるという報告はなく、食用にも薬用にもしません。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には、似たものはありません。個々の花を比較できれば、仲間のオカトラノオなどに似ています。

〇この仲間を代表するオカトラノオでは、茎頂に下方に湾曲する長さ20cm前後の細長い円錐塔状の花穂(総状花序)を出して、径1cm前後の白色の花を多数つけます。コナスビとは似ていません。
花穂(花序)がオカトラノオに似ている仲間に、ノジトラノオ、ヌマトラノオやサワトラノオがあります。

ノジトラノオでは、オカトラノオよりも葉が細く、茎に毛が密生していることで区別できます。ノジトラノオは多摩丘陵では未確認です。
ヌマトラノオは、水湿性地に自生しますが、花穂(花序)がほぼ垂直に立っていて、オカトラノオやノジトラノオのように花穂は下方に湾曲しません。多摩丘陵では、2015年現在では、北西端の保全水田や2か所ほどの里山公園で保全されています。
サワトラノオは環境省絶滅危惧に種です。花穂は、花序の下方の花が閉じると先端が伸びて新たな花を開いていくので、花が偏球形にかたまってついているように見えます。

コナスビも仲間ですが、個々の花を除けば草姿や花穂(花序)は似ていません。    
  
写真は「花」、「花穂」、「花序(蕾)」、
「葉」の4枚を掲載
クサレダマ
クサレダマの花
クサレダマ
クサレダマの花穂
クサレダマ
クサレダマの花序(蕾)
クサレダマ
クサレダマの葉