■特徴・分布・生育環境
「コナスビ」とは変わった名前ですがサクラソウ科の多年草です。
花序(花のつきかた)や草姿は全く似ていませんが、多摩丘陵などでよく見かけるオカトラノオの仲間です。
サクラソウ科の植物は、サクラソウの仲間(サクラソウ属)を除くと、個々の花をよく見れば似ているのですが、花序(花のつきかた:花穂の見た目)などがかなり違うので仲間とは思えないところがあります。
半日陰になるような小道脇などに自生しますが、茎は地を這うことがほとんどなので目立ちません。条件がよければ茎を四方に伸ばして広がります。
晩春〜夏に、葉腋に径1cmほどの小さな黄色の花をつけます。
花冠は5裂していますが基部まで裂けているので5枚の花弁からなっているように見えます。
小さいとはいえ黄色の花なので目立ちそうなものですが、地面に張り付くように咲いていて、しかも葉陰に咲くので、小道を歩いていても見落とします。
葉は、葉先が鈍三角形状〜円形状の広卵型です。葉の縁は全縁(葉の縁のギザギザがない)です。
果実はとても小さく、径4〜5mmの偏球形で、狭披針形のガク片になかば包まれています。
緑色から赤紫色〜黒紫色に熟して種子を出し、すぐに茶色になります。ただし、葉陰につくのでかき分けないと見つかりません。
日本各地から東アジアに広く分布します。
多摩丘陵では、比較的個体数は多いはずですが、里山では小道脇にはよく草刈が入ることもあって、花や果実にはなかなか出会えません。
■名前の由来
「小茄子(こなすび)」の名は、果実の形態を「茄子(なす)」に見立てたものであるというのが通説です。ただ、余り似ているとは言えません。
■文化的背景・利用
知られた詩歌や文芸などにその名は現れていないようです。
多くの本草書などにもその名は現れていないようです。
■食・毒・薬
有毒であるという報告はなく、食用にも薬用にもしません。
■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には、似たものはありません。個々の花を比較できれば、仲間のオカトラノオなどに似ています。
〇この仲間を代表するオカトラノオでは、茎頂に下方に湾曲する長さ20cm前後の細長い円錐塔状の花穂(総状花序)を出して、径1cm前後の白色の花を多数つけます。コナスビとは似ていません。
花穂(花序)がオカトラノオに似ている仲間に、ノジトラノオ、ヌマトラノオやサワトラノオがあります。
〇ノジトラノオでは、オカトラノオよりも葉が細く、茎に毛が密生していることで区別できます。ノジトラノオは多摩丘陵では未確認です。
〇ヌマトラノオは、水湿性地に自生しますが、花穂(花序)がほぼ垂直に立っていて、オカトラノオやノジトラノオのように花穂は下方に湾曲しません。多摩丘陵では、2015年現在では、北西端の保全水田や2か所ほどの里山公園で保全されています。
〇サワトラノオは環境省絶滅危惧に種です。花穂は、花序の下方の花が閉じると先端が伸びて新たな花を開いていくので、花が偏球形にかたまってついているように見えます。
〇クサレダマも仲間ですが、個々の花を除けば草姿や花穂(花序)は似ていません。
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写真は「花」、「花と葉」、「葉と花」、 「全体」、「若い果実」と「熟した果実」 の6枚を掲載 |
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コナスビの花 |
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コナスビの花と葉 |
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コナスビの葉と花 |
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コナスビの全体 |
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コナスビの若い果実 |
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コナスビの熟した果実 |
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