■特徴・分布・生育環境
日本原産の落葉低木で高さ2mほどになります。
夏に小さな花を皿型に多くつけ、周囲にだけ花被片(ガク)だけからなる大型の花をつけます。この花を装飾花と呼びます。
この装飾花だけが半球形になる「アジサイ」は、このガクアジサイの園芸品種とされています。
ガクアジサイ自身にも多くの園芸品種があります。中国を経て欧州に渡ったガクアジサイが園芸的に改良されたものをセイヨウアジサイと呼び、日本に逆輸入されています。
葉は、長さ15cm前後の幅広の楕円形で、葉質はやや厚く表面に光沢があります。
よく似たヤマアジサイでは、葉質が薄く葉の表面に光沢がありません。時に、ヤマアジサイはガクアジサイの変種とされます。
分類的には、通常ユキノシタ科に分類されますが、近年ではアジサイ科として独立させる説もあります。
本来は暖地の海岸に近いところに自生しています。
多摩丘陵には、自生のものはなかったと推定されます。人家周辺などによく植栽されています。
■名前の由来
アジサイの名は、「藍色が集まった」を意味している「集真藍」(あずさい)から転訛したものという説が一般的です。
「ガク」は、花冠の周囲を飾っている装飾花を「額縁」にみたてたものです。
漢字名の「紫陽花」は、中国大陸では別種の植物の名であったものが誤ってあてられたもののようです。
■文化的背景・利用
万葉集に「紫陽花」として2首に詠われています。しかし、その後の平安時代の古今和歌集、源氏物語や枕草子などには現れておらず、一時代の間忘れられていたような不思議なところがあります。
その後再度、平安時代末期、鎌倉時代から江戸時代に入ると多くの文芸や歌に現れています。
また、江戸時代に日本に滞在し「日本植物誌」を著したシーボルトが、花全体が装飾花になる種を学名「ヒドランジア・オタクサ」として記載しましたが、この「オタクサ」がシーボルトの愛した日本人女性のお滝さんに因んだものではないかということで物議を醸したことでも有名です。
なお、この学名はその後、有名な植物学者ツンベルグによって既に別の学名が記載されていたために無効になっています。
■食・毒・薬
余り知られてはいませんが、アジサイの仲間は青酸性の物質を含んでいるために食べると中毒を起こします。
民間薬として花に解熱の効能があるとされます。
■似たものとの区別・見分け方
この仲間(アジサイ属)には、10種ほどがあります。
○ガクアジサイでは、花序の周囲に装飾花が並びます。また、葉の表面には艶(光沢)があります。
○アジサイと呼ぶのはガクアジサイの園芸品種で全体に装飾花で覆われたものの総称です。花色など様々なものが作出されています。
○ヤマアジサイは、ガクアジサイの変種とすることがあり、葉の表面に艶(光沢)がなく葉質も薄い。
○タマアジサイは、蕾が球形で、弾けるよう花をだします。
○ノリウツギでは、花穂(花序)が円錐塔状で、見た目にも縦長に見えます。樹皮の内皮から和紙を作る際の糊を採るのに利用されます。1980年頃までは、多摩丘陵に自生があった可能性があります。
○エゾアジサイは、ヤマアジサイの変種とされ、全体に大型で花穂(花序)が倍近く大きい。また、装飾花は淡青紫色です。多摩丘陵に自生はありません。
○ガクウツギでは、装飾花の花被片(ガク片)が普通は3枚で大きさが明らかに不揃いです。多摩丘陵では未確認です。
○コガクウツギでは、装飾花の数が少なく1〜3個ほどしかありません。多摩丘陵では未確認です。
○コアジサイでは、装飾花がありません。多摩丘陵では未確認です。
○ツルアジサイでは、名の通りツル性です。装飾花の花被片(ガク)は普通4枚です。
○イワガラミは別属(イワガラミ属)で、ツルアジサイ同様にツル性ですが、装飾花のガク片が1枚だけであるのが特徴です。
なお、装飾花が周囲を囲んでいることで花序が似ているカンボク、ヤブデマリやムシカリは、スイカズラ科のガマズミの仲間(ガマズミ属)で、アジサイの仲間とはまったく別種です。アジサイの仲間では装飾花は普通は4枚の花被片(実はガク)ですが、ガマズミ属では装飾花は5枚で全て花弁からなっていることで基本的に異なっています。
ガマズミ属の装飾花は花弁でできています。したがって、装飾花の基部(底部)を下から見ると微小なガク片があります。
アジサイ属の装飾花はガク弁でできています。したがって、装飾花の基部(底部)を下から見てもガク片はなく、直接花柄に花被片(ガク片)がついています。
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写真は「花と葉」、「花、恐らく園芸品種」の2枚を掲載 |
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ガクアジサイの花と葉 |
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ガクアジサイの花、恐らく園芸品種 |
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