イヌホオズキ(犬酸漿)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

イヌホオズキ(犬酸漿) ナス科ナス属
学名:Solanum nigrum

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■特徴・分布・生育環境
草丈40cm〜60cmほどの1年草です。全草有毒です。
茎の途中で枝を分けて横に広がります。

夏から秋まで、長い間にわたって花と果実をつけています。
葉は卵円型で葉先は三角形状になります。
  
葉腋から花茎を出しその先でいくつかの花茎を分岐させて数個の花(果実)をつけます。
花は径1cm前後で白から紫色まで変異があります。

果実は径1cm以下と小さく緑色から最後は黒く熟します。

風船のような赤い袋をつけるホオズキは「ホオズキ属」で別属です。
赤い袋はガクが大きくなって果実を包むように発達したものです。

日本各地から熱帯〜温帯まで広く分布します。古い時代に日本に渡来したものであるという説もあります。
多摩丘陵では半日陰になるような林縁や市街地の草地などにしばしば見られます。

■名前の由来
草姿などがホオズキに似ていて、果実に赤い袋をつけないので「似て非なるもの」の「非(イナ)」から「イヌ」に転訛したもののようです。
しばしば「イヌ」は「犬」で、役に立たないことからの命名であるという説明がなされますが、犬は古い時代から狩猟や牧羊等など有用動物であったことから疑問があります。

「ホオズキ」の名は江戸時代の本草書などに「ホオ」という虫がよくこの葉を食べることから「ホオツキ」になったといった説明があるようですが、定説はありません。

「酸漿」の漢字名は、ホオズキの生薬名の「酸漿(さんしょう)」からきています。
「ホオズキ」には、「カガチ」、「ヌカズキ」や「アカカガチ」など別名も多くあります。

この仲間(ナス属)は有毒なものが多いのですが、ジャガイモやナスなど野菜として栽培されるものも多くあります。

■文化的背景・利用
「ホオズキ」は古事記に「アカカガチ」の名が現れていて、古くから親しまれていたようです。
しかし、イヌホオズキとしては現れていません。
万葉集やその後の多くの歌集や文芸にもイヌホオズキとしては現れていません。
江戸時代の本草書に「龍葵」などとしてイヌホオズキの名が現れています。 

■食・毒・薬
全草にアルカロイド系の有毒物質を含んでいます。
特に、果実には麻酔毒のサポニンを含みます。誤って食べると嘔吐や下痢を惹き起します。
全草を乾燥させたものを生薬名「竜葵(りゅうき)」と呼び、解熱や利尿に効能があるとされています。
もちろん、食用にはできません。

■似たものとの区別・見分け方
別属ですが「ホオズキ」とは、花色がホオズキでは通常淡黄色であるのに対して、イヌホオズキでは白から紫色なこと、何よりもホオズキには果実をガクが発達した袋が果実を包んでいることで容易に区別できます。

そっくりなアメリカイヌホオズキとは、巷間、花色や葉の形など諸説がありますが、個体変異もあって花色や葉での区別はまず無理です。
確実な違いは、花(果実)茎の先で分岐する花(果実)茎が、イヌホオズキでは僅かにずれて横に並ぶようにつくのに対して、アメリカイヌホオズキでは「1点」で分岐することです。

花や草姿がやや似たワルナスビでは茎や葉柄に鋭いトゲがあるので容易に区別できます。    
  
写真は「花」と「果実と葉」の2枚を掲載
イヌホオズキ
イヌホオズキの花
イヌホオズキ
イヌホオズキの果実と葉