■特徴・分布・生育環境
草丈10〜15cm(時に20cm)ほどの多年草です。花も葉も小さい。
塊根には強い毒性があり、また全体に有毒成分を含みます。
やや湿性のある平地の丘陵地〜低山地の山道・小道脇、あるいは半日陰(日照が半日ほど)になる林縁に自生します。
草丈のある他の草本が生育する前の早春に、新葉を出し、花をつけて、実を結びます。
このような生態は、他の植物との競争に勝ち残るための生存戦略であると思われます。
多摩丘陵では、まだ肌寒い2月中旬には新葉を地上に出して花茎を立てて、3月上旬には開花してすぐに果実を結びます。
ただ、個体によっては4月上旬まで花をつけることがあります。
早春に、細い茎を立てて枝分かれし、茎頂に長さ7〜8mm、花径5mmほどの小さな白色(時にごく淡い紅紫色を帯びます)の花を俯き加減につけます。
花の花被片は、外側のガク片5枚(長さ7mm前後)と、ほとんど開かない内側の花弁5枚(長さ3mm前後)からなります。
ガク片には、似たオダマキの仲間とは異なり、花の後方に付き出る距は小さく目立ちません。
葉は、3枚の小葉からなる3出複葉ですが、小葉が基部近くまで深裂しているので、もっと多くの小葉があるように見えます。
小葉は、長さ幅とも1cm前後です。茎葉も形態はほぼ変わりませんが、茎葉よりも新葉のほうが丸みがあります。
果実は袋果で、内部に小さな種子が多く入っています。
果実は、長さ1cmほどになる狭紡錘型(細くて両端が円錐形)で、茎の先に3〜5個を密につけます。春に熟してやがて裂開します。
「烏頭(うず)」の名は、トリカブトの仲間を指しますが、草姿や葉などがトリカブトの仲間にどこか似ていることからだと思われます。
ただし、ヒメウズはオダマキと近縁です。花の形態がオダマキに似ています。
分類的にはヒメウズをオダマキ属(Aquilegia:アキレギア)に含めることもあります。
ただ、ヒメウズは、オダマキの仲間とは異なり、雌蕊の数が少なく数が一定ではないこと、花の後部の距が目立たないことで、ヒメウズ属(Semiaquilegia:セミアキレギア)とするのが一般的です。
関東以西〜朝鮮半島・中国大陸に分布します。
多摩丘陵では、やや湿性のある林縁などに稀に見るだけで、地域的な稀少種です。周辺の低山地では比較的普通です。
■名前の由来
「烏頭(うず)」の名は、トリカブトの仲間の生薬名で、ヒメウズの草姿や葉を見た印象がトリカブトの仲間に似ていることからのようです。
「姫」は、似た他の種よりも「小さい」あるいは「可愛らしい」という意味でよく使われています。
他に、トリカブトの塊根と同様にヒメウズの塊根にも毒性があるから「烏頭」とされたという説もあります。
■文化的背景・利用
万葉集や多くの和歌集には詠われていないようです。
著名な本草書などにもその名は現れていないようです。
■食・毒・薬
キンポウゲ科では普通ですが、全体に有毒成分を含み、誤って食べると胃腸炎などや、多量に食べると心臓疾患を惹き起します。
切り口から出る乳液に触れるとカブレます。
漢方では、塊根を薬用にするという報告がありますが、未確認です。
もちろん、食用にはできません。
■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には似たものはありません。
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写真は「花」、「花:花被片の裏が淡紅色」、 「花と茎葉」、「花茎(小さな白い蕾が見えます)」 「葉」、「新葉」と「果実」」の7枚を掲載 |
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ヒメウズの花 |
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花:花被片の裏が淡紅色 |
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花と茎葉 |
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ヒメウズの花茎(小さな白い蕾が見えます) |
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ヒメウズの葉 |
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ヒメウズの新葉(2月中旬) |
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ヒメウズの果実(4月中旬) |
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