■特徴・分布・生育環境
欧州原産の外来種で、江戸時代末期(19世紀半ば頃)に渡来しています。
地際に長さ20cm前後のヘラ型の葉を10枚以上放射状に広げ、中心から数本の長い花茎を立てます。多年草です。茎葉ありません。
春〜初秋に、ほぼ垂直に立てる花茎は60cm近くになり、茎頂に小さな花が密に集まってつきます。
花は基部から順に咲き穂状(総状花序)になります。
花には花弁はなく、オシベを輪生状に長く突き出すので、花冠に環をつけているように見えます。
多摩丘陵には、堤防上や道路際など、あちこちに帰化しています。
■名前の由来
オオバコの仲間(同属)で、葉がヘラ型であることからの命名です。
「オオバコ」の名は、「大葉子」で「葉が大きい」という意味のようです。
しかし、葉はそれほど大きいわけではなく、人が踏みつけたような乾燥した裸地でも、長卵型の葉を地際に張り付くように放射状に広げている様子から、葉が目立つからではないかと思われます。
漢名の「車前子」は、手押車などで農道などを行くと、車の前に目立つことからの命名のようです。
■文化的背景・利用
オオバコと同じように、子供たちが向かい合って茎を絡み合わせて引っ張り、どちらが先に切れるかを競う「オオバコ相撲」をして遊びます。
ヘラオオバコは渡来時期が江戸末期なのでもちろん関係はありませんが、万葉集や古今集などに「若菜摘み」や「春菜摘み」などと詠われている食草に、オオバコも含まれていたという説があります。
「オオバコ」は、平安時代の「倭名類聚抄」や「本草和名」に「和名 於保波古(おほばこ)」として現れています。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」や貝原益軒による「大和本草」などにもオオバコは現れています。
■食・毒・薬
オオバコは、生薬名を「車前子」などと呼び、全草を陰干ししたものを煎じて飲めば、消炎、咳止めや利尿などに効能があるとしています。ヘラオオバコも同様に使用するようです。
オオバコの葉は、刻んで炒めて調味料をくわえるなどして食べると美味しいそうですが、ヘラオオバコを食用にするという報告はないようです。
■似たものとの区別・見分け方
オオバコとは、長い花茎や花穂の姿から容易に区別できます。
同じく外来種で大正時代初期(1910年頃)に北米から渡来したツボミオオバコは、オオバコに似ていますが花穂の花がほとんど開かないので「ツボミ」ですが、根生葉が長楕円形で葉柄が目立たず斜めに立ち上がることでオオバコとは区別できます。
ツボミオオバコは多摩丘陵では未確認ですが、見落としている可能性もあります。
トウオオバコは、全体にオオバコの2倍ほど大型で海岸近くに生育します。多摩丘陵では自生は確認していません。
|
|
写真は「花」と「根生葉」の2枚を掲載 |
|
ヘラオオバコの花 |
|
ヘラオオバコの根生葉 |
|