■特徴・分布・生育環境
原産は欧州ですが、1900年代の半ばに北アメリカに帰化していたものが渡来した外来種で、欧州原産なのに「アメリカ」の名がつけられたようです。
草丈1mを越える2年草で、茎や葉など全体に多くの鋭くて長いトゲで武装しているので見てすぐにわかります。アザミの仲間(同属)です。
花は夏に咲き、アザミによく似ています。
花の総苞(花の基部を形成している沢山の葉状の苞葉片の集まり)も鋭いトゲになっています。
近年、その分布を広げているようで、多摩丘陵周辺でも市街地の小さな草地から里山にも目立つようになってきています。
逆に、別属(ヒレアザミ属)ですが、同様に外来種で、茎などに鋭いトゲを備えた硬いヒレで武装したヒレアザミは個体数が少なくなっているようです。
■名前の由来
「アメリカ」の名は上述の通りです。「オニ(鬼)」は文字通り全草が鋭くて長いトゲで重武装していることからの命名のようです。
「アザミ」の名は、古語でアザミの葉のようにちくちく痛いことを「あざむ」と言っていたことから転訛したものというのが通説です。
日本に自生している「オニアザミ」も鋭いトゲがあるので、そのアメリカ外来種版として命名された可能性もあります。
■文化的背景・利用
渡来してまだ百年ほどなので詩歌や文芸には表れてはいないようです。
なお、上述の通り「アザミ」が古語の「アザム」から転訛したという通説の割に、万葉集やその後の多くの古典的な和歌集には詠われていないようです。
近世の詩歌にはしばしば表れていて、「花さくや 今十八の 鬼あざみ」小林一茶や「世をいとふ 心薊を 愛すかな」正岡子規などがあります。
■食・毒・薬
アザミの仲間は日本には50種近くが分布していますが、その多くは食用になるようです。
たとえば、春から初夏に咲く後述のノアザミの若い葉も茹でれば葉のトゲは気にならなくなり、和え物やテンプラ等にできます。
ただ、アクが強いのでよく茹でるなどする必要があるようです。
また、モリアザミの根は、漬物にして「ヤマゴボウ」として観光地なのでよく販売されています。
ただ、アメリカオニアザミを食用にすることはないようです。
漢方では、後述するノアザミ、ノハラアザミやトネアザミなどを利尿剤、解毒剤や止血剤などに利用するようです。
■似たものとの区別・見分け方
日本には、アザミの仲間(アザミ属)は変種も含めれば50種ほども自生していますが、多くは分布域が限られていて、標高の低い山野や里山に普通に自生するのは以下の4種と上述の(別属ですが)ヒレアザミだけです。
〇ノアザミは、アザミの仲間には珍しく、春から初夏に花をつけるので、容易に区別できます。
また、花の基部の総苞(緑色の葉状の多くの総苞片が密についているトックリ型から筒型の部位)が(僅かに凹凸はありますが)ほぼ平滑で総苞片が開出しないのも特徴です。
○ノハラアザミでは、花は初秋から秋に咲き、花の基部の総苞(緑色の葉状の多くの総苞片が密についているトックリ型から筒型の部位)のトゲ状の総苞片が斜め上にやや開出しているのが特徴です。
したがって、遠目で見ると総苞がやや平滑に見えます。
○トネアザミ(別名:タイアザミ)では、ノハラアザミと同様に花は初秋から秋に咲きますが、花の基部の総苞(緑色の葉状の多くの総苞片が密についているトックリ型から筒型の部位)のトゲ状の総苞片が明らかに開出しているのが特徴で、総苞片がやや下向きに湾曲していることも多い。
したがって、遠目で見ると総苞片が目立ちます。
花は上向き〜横向きに開花するものまで変異があります。
なお、トネアザミは、本州中北部に分布するナンブアザミ(学名:Cirsium nipponicum)の総苞片のトゲが太くて長い変種(学名:Cirsium nipponicum var. incomptum)です。
ただ、中間的な形態を示すものあるので区別は結構難しい。
○アメリカオニアザミでは、茎・葉や総苞など全草にわたって、長さ2cmほどの多くの鋭くて長いトゲで重武装しているので容易に区別できます。
葉の葉軸にヒレがありますが、ヒレアザミとは異なり茎には(連続した)ヒレはありません。
なお、このような鋭いトゲを持つアザミは、日本海側に自生するオニアザミが知られていますが、多摩丘陵には似たものはありません。オニアザミでは葉だけにやや長い鋭いトゲがあります。
○別属(ヒレアザミ属)ですが、ヒレアザミでは、茎などに鋭いトゲを備えた硬い板状のヒレがあることで容易に区別できます。
なお、ヒレアザミ属は種子に冠毛がないことで、冠毛があるアザミ属とは別属に分類されます。
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写真は「新葉」、「蕾とトゲ」 と「花と茎のトゲ」の3枚を掲載 |
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アメリカオニアザミの春の新葉 |
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アメリカオニアザミの蕾と葉のトゲ |
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アメリカオニアザミの花と茎のトゲ |
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