■特徴・分布・生育環境
「ユキノシタ科」を代表する植物です。ただ、ユキノシタ科は15の亜科に分けられ、アジサイなど、それぞれを独立の科とする考え方もあります。
ユキノシタは、山地の湿性のある岩上や日陰になるやや湿性地に生育する常緑の多年草です。紫色の走出茎を出して殖えるのでしばしば群生します。
初夏に高さ20〜50cmの花茎を立てて円錐塔状の花穂(円錐花序)をつけ、ややまばらに花をつけます。
花は、花弁が5枚ですが、上部の3個は小さく、下部の2枚が細長いのが特徴です。上部の3枚の花弁は淡紅色で赤い斑点があり、長さ3mmほどの狭卵型で先は鋭三角形状です。下部の2枚の花弁は細長く白色で長さ1〜2cmほどの披針形ですが、大きさは不揃いです。
葉は根茎から束生し、やや長い葉柄(3〜10cm)の先につけ、径3〜8cm前後の偏円形(腎円形)です。
葉には毛が密にあり、葉脈に沿って白斑が入るのが特徴です。また葉裏が暗紫色なのも特徴です。
本州以西から中国大陸に分布します。
多摩丘陵では、もともとの自生はなかったと思われます。人家周辺などに時々半野生化しています。庭などにはしばしば植栽されています。
■名前の由来
冬季に積雪の下になっても枯れないので「ユキノシタ」となったというのが定説です。
■文化的背景・利用
多くの歌集などには詠われていないようです。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」に「虎耳草」として「ユキノシタ」の名が現れています。また、貝原益軒による「大和本草」にもその名が現れています。
■食・毒・薬
民間で生の葉の汁をうるしかぶれに用います。また、生の葉を火にかざして軟らかくして、しもやけやひび等に用います。
葉を乾燥させたものが生薬「虎耳草(こじそう)」で、煎じたものは心臓病や肝臓病などに効能があるとされます。
葉は山菜としてよく知られていて、塩茹でして水に晒し、和え物、汁の実や煮物にします。
また、葉の裏面だけに衣をつけてあげたテンプラは美味です。
■似たものとの区別・見分け方
似たものに、ハルユキノシタ、ジンジソウやダイモンジソウがありますが、いずれも山地に生育し、多摩丘陵では確認できていません。
ハルユキノシタでは、葉に白班はなく、花は春につけます。
ジンジソウでは、花弁は全て白色で、下部の2枚の花弁が長いのが特徴で、それを「人」の字に見立てた命名です。
ダイモンジソウは、ユキノシタに似ていますが、葉は5〜17浅裂していて白班はありません。花弁は全て白色で、花の形態を「大」の字に見立てた命名です。なお、上向きにつく花では花弁の長さが同じになる傾向があります。
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写真は「花」、「全体」と「葉」の3枚を掲載 |
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ユキノシタの花 |
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ユキノシタの全体 |
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ユキノシタの葉 |
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