ヤマユリ(山百合)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ヤマユリ(山百合) ユリ科ユリ属
学名:Lilium auratum

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■特徴・分布・生育環境
日本特産種です。   
茎を1本立て花時には、高さ1m〜1.5mになる大型の多年草です。茎は、中程で下方に湾曲し、花をつけます。

地下に径6〜10cmの偏球形の鱗茎(球根)があります。

葉は、茎に互生(互い違いにつく)し、茎の下部から上部までややまばらですが多くつけ、長さ10〜15cmの披針型で、葉先は鋭三角形状です。

夏に、茎頂に花柄を分けて、数個から時に20個余りの大きな花をつけます。
花色は白色ですが、中脈に沿って黄班が入り赤褐色の斑点が多くあります。
花は漏斗型で、花被片は長さ10〜18cm、花径も20cm前後と大型で、日本の野生植物の中では最大であるとも言われます。
花の芳香も素晴らしく、部屋に生けるとむせかえるほどです。

果実は、長さ5〜8cmの紡錘型で6稜があります。

本州の近畿以北から東北地方に分布します。
神奈川県の県花です。
多摩丘陵では、半日陰になる斜面に自生しますが掘りとられることが多く、2010年現在、この30年ほどの間に個体数を大きく減らしています。

■名前の由来
ユリの仲間は、細い茎に大きな花をつけ、わずかな風にも揺れることから「揺り」から名づけられたと言われています。
「山」は、園芸品種ではなく野生であるといった意味のようです。
漢字名の「百合」は、生薬名からのようです。
ただ、江戸時代までは、リョウリユリ(料理百合)、ヨシノユリ(吉野百合)やエイザンユリ(叡山百合)などと呼ばれていて、「ヤマユリ」の名は明治時代以降であるとされています。

■文化的背景・利用
万葉集に10首余りで「ゆり」が詠われていますが、これはササユリやヤマユリであるとする説と、ササユリやオニユリなどでヤマユリは含まれていないなどの説があります。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」に「百合」として現れているのは「ヤマユリ」であるとされます。

ヤマユリは、1873年のウイ−ン万博に出品され、その花の大きさと甘くて強い芳香が欧州で注目され、大正時代までヤマユリの球根は万の単位で毎年輸出されていました。
このヤマユリを母種として多くの園芸品種が作出されています。切り花としてよく知られている「カサブランカ」もヤマユリを母種のひとつとしているとされています。

古くから美人のたとえとして「立てばシャクヤク、座ればボタン、歩く姿はユリの花」がよく知られています。
なお、これらは婦人病の薬草でもあり、シャクヤクは冷え性、月経不順や産後の疲労回復など、ボタンは月経困難や便秘など、ユリは乳腺炎などに効能があるとされます。
ただ、ユリの仲間の名前は、その美しさにそぐわない「山」、「鬼」、「鉄砲」、「車」や「笹」などと名付けられていて、少し違和感があります。

■食・毒・薬
鱗茎(りんけい)は生薬「百合(ひゃくごう)」と呼ばれ、鎮咳(ちんがい)、滋養・強壮、解熱、乳腺炎や利尿などに効能があるとされます。

鱗茎は、やや苦みがありますが縄文の時代から「百合根」として食用にされてきています。

■似たものとの区別・見分け方
ユリの仲間(ユリ属)は、花が大きくて美しいのが特徴です。淡紅色のササユリ、赤橙色のオニユリ、純白のテッポウユリ、橙赤色で葉が輪生するクルマユリや、やや淡紅色を帯び濃紅色の斑点が多く入るカノコユリなど、ほぼ花色が異なることで容易に区別できます。
多摩丘陵では、人家周辺にカノコユリ、オニユリやコオニユリが時々植栽されています。    
  
写真は「花1」、「花2」、「果実」と
「芽生えの葉」の4枚を掲載
ヤマユリ
ヤマユリの花1
ヤマユリ
ヤマユリの花2
ヤマユリ
ヤマユリの果実
ヤマユリ
ヤマユリの芽生えの葉