ヤマツツジ(山躑躅)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ヤマツツジ(山躑躅) ツツジ科ツツジ属
学名:Rhododendron kaempferi

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■特徴・分布・生育環境
半常緑の低木で、高さ1m〜3mほどになります。
春に出る葉は秋に落葉し、夏に出る葉の多くは越冬します。

春から初夏にかけて、枝先に径4〜5cmほどの漏斗状の花を2〜3個つけます。
花冠は朱色で5裂しています。花色には変異があり、時に紅紫色あるいは白色のものがあります。

葉は、互生(互い違いにつく)で、春に出る葉は両端が三角形状で長さ3〜5cm、幅2〜3cmの楕円形で、両面に褐色の伏毛があります。
夏に出る葉は小型で、長さ1〜2cmほどのサジ型で先端は鈍三角形状または円形で、両面に毛が密生します。夏に出る葉の多くは越冬します。

多摩丘陵に自生する唯一の野生のツツジです。
時々、ツツジとサツキを別の仲間であると誤解されることがありますが、サツキはツツジの仲間(ツツジ属)の1種で、旧暦の「皐月(さつき)」の頃(現在の6月頃)に開花することから「サツキ」の名があり、それぞれ交配されて多くの園芸品種が作出されてきています。

日本各地に分布します。ツツジの仲間(ツツジ属)は北半球に850種余りがあります。
多摩丘陵では、限られた地域にしか確認できておらず、また個体数も多くはありません。多くの園芸品種が庭や公園などによく植栽されています。

■名前の由来
「ツツジ」の名の由来はよくわかっていないようです。古い時代に既に「ツツジ」と呼ばれています。なお、「次々に咲く」から転訛したという説や、花の形態から「筒咲く」から転訛したという説などがあります。
漢字名の「躑躅」はしばしば「羊躑躅」とされますが「羊この葉を食せば躑躅(てきちょく:ウロウロする)として斃 (たお)る」からのもので、レンゲツツジなど一部有毒なものがあることから「躑躅」です。

■文化的背景・利用
万葉集に10首余りに詠われていて、
「山超えて 遠津の浜の 石つつじ 吾が来るまでに 含みてあり待て」などがあります。
平安時代の古今和歌集にも「おもひいづる ときはの山の いはつつじ いはねばこそあれ 恋しき物を」があります。
西行法師の「山家集」にも「つつじさく 山のいはかげ 夕映えて をぐらはよその 名のみ成けり」など数首に詠われています。

平安時代の「倭名類聚抄」や「本草和名」に「羊躑躅」として「和名 以波都々之(いわつつじ)」などとして現れています。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」などにその名が現れています。
江戸時代の芭蕉などの俳句にも詠われています。

■食・毒・薬
ヤマツツジについては有毒であるという報告も薬用にするという報告もありません。ただし、ツツジの仲間(ツツジ属)には、レンゲツツジなど上述の通り有毒なものがあるので注意が必要です。
食用にはなりません。

■似たものとの区別・見分け方
オオヤマツツジが似ていますが、オオヤマツツジでは開花の後で葉が展葉します。オオヤマツツジでは花や葉がヤマツツジよりもやや大きいのですが、並べて見ないと区別は困難です。なお、ヤマツツジではオシベは5個ですがオオヤマツツジではオシベは10個ほどあります。オオヤマツツジは多摩丘陵では未確認です。    
  
写真は「花(1)」、「花(2)」、「花(3)」
と「花と葉」の4枚を掲載
ヤマツツジ
ヤマツツジの花(1)
ヤマツツジ
ヤマツツジの花(2)
ヤマツツジ
ヤマツツジの花(3)
ヤマツツジ
ヤマツツジの花と葉