ヤマモモ(山桃、楊梅)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ヤマモモ(山桃、楊梅) ヤマモモ科ヤマモモ属
学名:Myrica rubra

| 総索引へ戻る |
写真一覧表の| 早春へ | 春へ | 夏へ | 初秋へ | 秋へ | 冬へ |
| トップページへ戻る |
■特徴・分布・生育環境   
樹高5〜15m、時に20mを越す常緑高木です。雌雄異株です。
海岸に近い照葉樹林に自生します。
樹皮は灰白色から赤褐色で細かいシワがあります。

春に、枝先の葉腋に褐色で目立たない円柱状の小さな花をいくつかつけます。
雄株の雄花は長さ2cmほど、雌株の雌花は長さ1cmほどです。

葉は互生(互い違いにつける)し、細長い倒披針形(葉先の方でやや幅が広い)で、葉先も基部も三角形状です。
葉はやや厚く革質で、長さ5〜10cm、幅2〜3cmほどです。葉縁は全縁(葉の縁にギザギザがない)ですが、まばらに小さな鋸歯(ギザギザ)があることがあります。

果実は、径2cmほどの球形で細かい粒状の突起があり、夏に紅色から暗赤色に熟します。甘酸っぱくて食べられます。

関東地方以西の本州以西から朝鮮半島・中国大陸・台湾・フィリピンに分布します。
多摩丘陵では、最東端に自生していた可能性がありますが、2010年現在自生は確認できていません。
人家周辺に稀に植栽され、公園樹として植栽されています。

■名前の由来
甘酸っぱくて食べられる果実を「桃」に擬(たと)えたものであるという説が一般的です。平安時代には既に「やまもも」と呼ばれていたようです。

■文化的背景・利用
平安時代の「倭名類聚抄」に漢名「楊梅」として「和名 夜末毛々(やまもも)」として現れています。同じ平安時代の「本草和名」にも同様に現れています。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」にも「楊梅」として「ヤマモゝ」として現れています。
知られた詩歌や文芸にはその名は現れていないようです。

■食・毒・薬
果実は上述の通り甘酸っぱくて食べられますが、腐りやすいので市場には流通していません。
熟した果実をホワイトリカーに浸けたヤマモモ酒には、滋養・強壮や健胃に効能があるとされます。

樹皮を剥いで天日乾燥させたものが生薬「楊梅皮(ようばいひ)」で、煎じたものに下痢止めなどの効能があるとされます。
また、煎じたものを酢などで練って塗布すれば打撲傷、捻挫、湿疹やカブレなどに効能があるとされます。

樹皮は古い時代から染料として利用され、塩水に強いので魚網を染めるのに用いられてきています。
ただ、現在では化学染料などが用いられているので使用されないようです。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵に似たものはありません。    
  
写真は「果実」、「果実と葉」、「若い葉」と「幹」
の4枚を掲載
ヤマモモ
ヤマモモの果実
ヤマモモ
ヤマモモの果実と葉
ヤマモモ
ヤマモモの若い葉
ヤマモモ
ヤマモモの幹