■特徴・分布・生育環境
日本に自生する藤の仲間(フジ属)は、フジ(別名ノダフジ)と近畿以西(中部地方以西とする説もあります)に自生するヤマフジの二種で、ともに日本特産です。
落葉のツル性の木本で長いツルで巻きついて高い木によじ登ります。蔓は上から見て左巻です。「フジ(ノダフジ)」では右巻です。
春に花を房のように(総状花序)に下垂させて多くの花をつけます。
花はマメ科特有の蝶型花で、花房の基部から順に咲いていくフジとは異なり、ヤマフジでは花房の花はほぼ同時に開花するのが特徴です。
花房は長さ20cmほどとフジよりも短いのも特徴です。
果実はインゲン豆のように細長く長さ10〜20cm、時に30cmになります。
葉は、奇数羽状複葉(葉軸に沿って左右に小葉を並べ先端に1枚の小葉をつける)で、小葉は長さ4〜8cm前後の楕円形で葉先は三角形状で全縁(葉の縁にギザギザがない)です。
もともとの分布は上述の通り近畿以西(中部地方以西とする説もあります)なので、多摩丘陵には自生はなく、ごく稀に人家周辺に植栽されています。
■名前の由来
フジの名前の由来は、中国のシナフジを「紫藤」とすることからであるという説があります。あるいは、花が「吹き散る」から転訛したという説もありますが、いずれにしても古い時代から既に「フジ」と呼ばれていることもあり、定説はないようです。
「山」は、フジと区別されるための命名で、特にヤマフジが山地にのみ自生するわけではありません。
■文化的背景・利用
フジは、万葉以前から親しまれていたようです。万葉集では26首にも詠われています。
その後、源氏物語や枕草子、あるいは平家物語にも現れています。
当時は、フジとヤマフジは区別されていなかった可能性があります。
また、フジのツルからは繊維をとり出して布を織り衣服に利用していたようで、万葉集以前の古事記にもその記述あるとのことです。
万葉集の「大王の 塩焼く海人の 藤衣(ふじころも) なれはすれども いやめづらしも」の歌からもそのことが伺えます。
「藤蔓」は、細工物にも使われ、現代でも籠などが作られています。
フジの花はまた、神の降臨する依代(よりしろ)として神聖視もされていたようです。
そのせいか、家紋や様々な意匠などにフジが使われています。
藤原はもとより佐藤、伊藤、齋藤や加藤など多くの姓にも「藤」が使われています。
また、フジは観賞用に園芸化され多くの品種があります。
「藤棚」が作られ始めたのは江戸時代であると言われ、それ以前は、同じく神の降臨する依代(よりしろ)として神聖視もされていた松に巻きつかせて観賞していたようです。
■食・毒・薬
フジは、若芽を茹でて和え物などに、また花をテンプラなどにします。
花を塩漬けにしたものを花茶とする優雅な習俗もあります。
昔は種子を食用にしていたという報告もあります。ただし、藤の果実を煎じたものを漢方では下剤に使用するとのことなので、注意が必要でしょう。ヤマフジでも同様であろうと思われます。
■似たものとの区別・見分け方
似たフジは、ツルが上から見て右巻です。また、フジでは花房が30〜80cmほどと長く、また花は花房の基部から順に開花します。
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写真は「花」と「花房」の2枚を掲載 |
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ヤマフジの花 |
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ヤマフジの花房 |
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