| ■特徴・分布・生育環境
草丈は５ｃｍ〜１０ｃｍほどで、明瞭な茎はたてません。 匍匐（ほふく）茎を這わせて広がるため、しばしば群生しているように見えます。 葉は、三つの小葉からなる三出複葉で、小葉の縁に粗い鋸歯（ギザギザ）があります。 小葉は扁球形で径２ｃｍ前後です。三つの小葉の下側２枚はしばしばやや２裂します。 春から初夏に高さ１０ｃｍほどの花茎を立て、茎頂に径２ｃｍほどの黄色い花を１個つけます。花弁の間に隙間が目立ちます。 花の基部に萼片とは別につく副萼片が大きく、上から見るとギザギザと浅裂した緑色の副萼片が目立ちます。 仲間（同属）のヘビイチゴでは副萼片は花弁の下に隠れていて上からは見えないのが普通です。 花後に径２ｃｍほどの赤い球形の果実を１個つけます。表面は痩果に覆われていてツブツブに見えます。 関東以西からアジア東部〜南部に広く分布します。 多摩丘陵ではやや湿性のある草地などに時々見かけます。 ■名前の由来 「ヘビ」の名の由来については定説はありません。よく言われるのは「果実が美味しくないので蛇にでも食べさせろ」ですが、「匍匐（ほふく）茎を這わせて広がるのでそれを蛇に例えた」のほうが説得力があります。 ヘビイチゴに似ていて別種なので「ヤブ」と冠されたようです。ただ、別に藪にだけ生育するわけではなく、ヘビイチゴと同じような環境下に生育します。 ■文化的背景・利用 平安時代の清少納言による枕草子に「名恐ろしきもの」として「蛇苺」の名があげられているようです。 江戸時代の「大和本草」や「本草綱目啓蒙」にもヘビイチゴは現れているようです。 いずれにしてもヤブヘビイチゴの名は現れていません。ただ、その当時にヤブヘビイチゴが区別されていたかどうかはわかりません。 ■食・毒・薬 果実はいかにも毒々しいので、しばしば有毒であるとされますが、味も香りもないだけで食べても問題はありません。 ヘビイチゴは、漢方では、花の時期の全草を天日で乾燥させたものを生薬名で蛇苺（じゃも）と呼び、解熱、通経や痔に効能があるとしていますが、ヤブヘビイチゴが薬用にされるという報告はないようです。ただ、中国では、ヘビイチゴと同様な薬用に用いるようです。 ■似たものとの区別・見分け方 よく似たものに仲間（同属）のヘビイチゴがありますが、ヤブヘビイチゴでは花の基部に萼片とは別につく副萼片が大きく、上から見るとギザギザと浅裂した副萼片が目立ちます。 ヘビイチゴの副萼片は普通は上からは見えません。また、ヤブヘビイチゴの果実や葉はヘビイチゴよりもやや大きいのですが、個体差もあるので大きさでの判断は困難です。 名前が似た「オヘビイチゴ」は、別属の「キジムシロ属」で、葉が５枚の小葉からなる掌状複葉で、イチゴのような果実はできません。 果実は痩（そう）果（堅い乾いた種子）で、径１ｃｍ弱の卵型で緑色のガクに包まれ、熟すと内部から淡褐色の小さな（径１.２ｍｍほど）種子を多数出します。多摩丘陵では、オヘビイチゴは未確認です。 別属ですが、花が同じように黄色で似た花のミツバツチグリやキジムシロでは、花茎の先で花柄が枝分かれして数個の花をつけるのに対して、ヘビイチゴやヤブヘビイチゴの花は花茎の先に１個だけつけます。 また、ヘビイチゴやヤブヘビイチゴの花では、花弁の間に隙間があるのも特徴のひとつです。 |
| 写真は「花」(1)、「花」(2)と「葉」の３枚を掲載 |
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| ヤブヘビイチゴの花（１） |
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| ヤブヘビイチゴの花（２） |
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| ヤブヘビイチゴの葉 |