ツユクサ (露草、梅雨草)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ツユクサ(露草、梅雨草) ツユクサ科ツユクサ属
学名:Commelina communis

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■特徴・分布・生育環境
茎を這うように出して分岐させ、その先で立ちあがらせて高さ20〜50cmほどになる1年草です。

夏の梅雨時から初秋に、茎の先の葉腋に長さ2〜3cmほどの花茎を出して数個の花をつけます。
花径は2cmほどで、3枚の花弁の内、上方に並ぶ2枚が大きく青色で卵円形、下方の1枚は小さく白色で長さ5mmほどの披針型です。雄蕊(おしべ)は6本ありますが、下側の長い2本が完全雄蕊で、上方の3本と1本は仮雄蕊(花粉を出さない)で形が違います。花は1日花で、朝咲いて午後にはしおれてしまいます。

葉はやや細長く、長さは5〜8cm、幅1〜2cmの卵状披針型で、葉先は鋭三角形状です。
  
日本各地から北東アジアに分布します。
多摩丘陵では、湿性のある林縁から草地などに比較的よく見られます。

■名前の由来
古名に「ツキクサ(着き草)」があり、そこから転訛して「ツユクサ」となったというのが一般的です。
漢字名の「露草」や「梅雨草」は、「ツユクサ」の音からの当て字のようです。

■文化的背景・利用
この花を染料として利用しますが、水溶性のため下絵を描くのに適して(水に晒せば消える)います。友禅染や絞染の下絵描きにツユクサの変種(オオボウシバナ:花径が倍近く大きい)の花から採取する染料を利用するとのことです。

古い時代には摺染(すりぞめ)として、花びらを衣服に摺りつけて染めたようですが、染めても水につけるとすぐに落ちてしまうので、朝咲いても午後には萎れてしまう花と同じように儚(はか)ないものとされてきています。

平安時代の「本草和名」や「倭名類聚抄」に「都岐久佐(つきくさ)」などの名が現れています。
万葉集に10首余りで詠われていて、「月草(つきくさ)の 徙(うつ)ろひやすく 念(おも)へかも 吾(わ)が念(おも)ふ人の 事も告げ来ぬ」などと「儚さや移ろいやすさ」が詠われています。
「古今和歌集」などにも詠われています。

清少納言の「枕草子」に「つきくさ、うつろひやすなる・・・」と現れています。源氏物語にもその名が現れています。
西行法師の「山家集」にも「つゆくさ」の名で詠われています。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」に「ツキクサ」や「ツユグサ」の名が現れています。貝原益軒による「大和本草」などにもその名が現れています。
なお、「つゆくさ」は俳句では秋の季語です。

■食・毒・薬
民間で、全草を乾燥させたものを鴨跖草(オウセキソウ)と呼び、湿疹やかぶれなどに効能があるとされます。また、利尿などにも効能があるとされます。
若い葉を茹でて食用にします。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵に似たものはありません。    
  
写真は「花」と「葉と花」の2枚を掲載
ツユクサ
ツユクサの花
ツユクサ
ツユクサの葉と花