ツリガネニンジン(釣鐘人参)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ツリガネニンジン(釣鐘人参) キキョウ科ツリガネニンジン属
学名:Adenophora triphylla var. japonica

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■特徴・分布・生育環境   
草丈40〜50cm、時に1mほどになる多年草です。茎をほぼ直立させます。
やや湿性のある日当たりのよい土手などに生育します。

初秋に、茎の先の方に、数段にわたって短い花茎を輪生させて1(〜数個)の花を吊り下げます。
花冠は、長さ2cmほどの釣鐘型で、淡紫色(時に白色)です。花冠の先は小さく広がっています。

葉は変異が多く、長さ4〜8cmの卵状楕円形から披針型で葉先は三角形状、4枚の葉を輪生させます。葉には鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。

中国地方以西から中国に分布する「サイヨウシャジン」を基本種とする変種です。
この仲間(ツリガネニンジン属)は、根を薬用にすることから、イワシャジン、ヒメシャジンやフクシマシャジンなど、生薬名「沙参(しゃじん)」の名をもつものがほとんどですが、このツリガネニンジンとソバナだけが「シャジン」の名を持っていません。

日本各地から樺太・南千島に分布します。
多摩丘陵では、2010年現在この30年ほどの間に個体数を大きく減らしていて、現在では、限られた場所に少ない個体数しか確認できていません。

■名前の由来
花の形を、お寺の釣鐘(つりがね)に擬(たと)え、太くて長い根茎を、古くから薬用や強壮に用いるチョウセンニンジンにたとえて「ニンジン」です。なお、チョウセンニンジンはウコギ科で、また野菜の人参はセリ科で全く別種です。

■文化的背景・利用
万葉集や知られた歌集・文芸などに、その名は現れていないようです。
平安時代の「本草和名」にその名が現れています。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」に「シャジン」や「ツリガネニンジン」等の名で現れています。また、貝原益軒による「大和本草」などにもその名が現れています。
「山でうまいはオケラにトトキ、嫁にやるのも惜しうござる」と囃子(はやし)歌に現れる「トトキ」は、「ツリガネニンジン」の古名で、古い時代から食用にされてきています。なお、「オケラ」は、やはり若い葉が美味しいキク科の「オケラ」です。

■食・毒・薬
根の外皮を剥いで細かく刻み、天日乾燥させたものが生薬「沙参(しゃじん)」で、鎮咳(ちんがい)や去痰(きょたん)などに効能があるとされています。

春のツリガネニンジンの若芽はとても美味しく、古くから、茹でて水にさらし、あえもの、汁のみ、おひたしや油いため等にして食用にします。
太い根茎も、刻んで茹でて水にさらし、きんぴらや和え物などにします。

■似たものとの区別・見分け方
この仲間(同属)では、ソバナやフクシマシャジンが多摩丘陵に自生する可能性がありますが、

○ソバナは、関東や中部地方ではやや標高の高い山地に自生し、枝をよく分けて、枝先にまばらな円錐花序を出して漏斗(ろうと)状鐘形の青紫色の花を多くつけます。
○フクシマシャジンは、花序がまばらな円錐状なので区別できます。
ソバナもフクシマシャジンも多摩丘陵では確認できていません。    
  
写真は「花」、「全体1」と「全体2」
の3枚を掲載
ツリガネニンジン
ツリガネニンジンの花
ツリガネニンジン
ツリガネニンジンの全体1
ツリガネニンジン
ツリガネニンジンの全体2