| ■特徴・分布・生育環境
中国原産で明治時代初期に渡来した外来種です。 常緑の小高木で高さ５ｍから１０ｍほどになります。よく分枝し、密な樹形を作ります。 樹皮は灰褐色で皮目があります。 名は「モチ」ですが、モチノキ科ではなくモクセイ科の樹木です。 夏に、枝先に高さ１０〜２０ｃｍ前後の円錐塔状の花序（円錐花序）を出して、長さ４ｍｍほどの小さな漏斗型で先が４裂する白い花を多くつけます。 葉は対生（対になってつく）し、革質で厚く表面に光沢があります。 葉身はやや大きく、葉先が鋭三角形状の卵状楕円形（葉の基部のほうが幅が広い）で長さ１０ｃｍ前後、幅４ｃｍ前後ほどで、全縁（葉の縁のギザギザがない）です。 果実は長さ１ｃｍ程度の偏球形で秋から初冬に黒紫色に熟します。この果実は野鳥がよく食べ、糞として種子を落とすので、あちこちに実生の幼木をみかけます。 本州関東地方以西から北東アジア・台湾に分布します。 多摩丘陵では人家近くに時々植栽されています。また、多摩丘陵では植栽されていたものから逸出した個体が時々野生化しています。 ■名前の由来 葉の様子がモチノキに似ていて、果実がネズミの糞にそっくりであるとの命名です。「唐」は中国原産であることからです。 ただし、今時、ネズミの糞といっても見たことがない人が多くなっています。逆に、径１ｃｍほどの黒い紡錘形の果実を見せて、ネズミの糞はこれとそっくりです、と説明したほうが分かり易いかもしれません。 ■文化的背景・利用 仲間（同属）のネズミモチは枕草子や平安時代の「本草和名」や「倭名類聚鈔」にその名が現れています。 また、江戸時代の「本草綱目啓蒙」や貝原益軒による「大和本草」などにその名が現れています。 トウネズミモチは、渡来して歴史が浅いため、知られた詩歌や文芸などには現れていません。 丈夫で生長が早いので、工場緑化樹などのためによく植栽されます。 ■食・毒・薬 熟した果実を乾燥させたものが生薬「女貞子（じょていし）」で、古い時代から薬用にされ、強心、利尿や強壮・強精などの効能があるとされています。 また、葉や樹皮には解熱の効能があるようです。 果実を含めて食用にはしません。 ■似たものとの区別・見分け方 在来のよく似た仲間（同属）のネズミモチとは、トウネズミモチでは葉がネズミモチよりもやや大きく、葉の基部に近いほうで幅が広くなっていることで区別できます。 また、葉を裏から透かして見て葉脈の支脈が見えればトウネズミモチです。 さらに、果期には、ネズミモチの果実では両端が丸い紡錘型であるのに対してトウネズミモチではほぼ球形（偏球形）なので容易に区別できます。 この仲間（イボタノキ属）を代表するイボタノキとは、果実は似ていますが、葉がやや小さい楕円形で葉先が丸いこと、また花が一回り大きいことで区別できます。 |
| 写真は「花」、「若い果実」、「熟した果実」、 「透かして見た葉裏」と「幹」の５枚を掲載 |
 |
| トウネズミモチの花 |
 |
| トウネズミモチの若い果実 |
 |
| トウネズミモチの熟した果実 |
 |
| トウネズミモチの透かして見た葉裏 |
 |
| トウネズミモチの幹 |