トウカエデ(唐楓)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

トウカエデ(唐楓) カエデ科カエデ属
学名:Acer buergerianum

| 総索引へ戻る |
写真一覧表の| 早春へ | 春へ | 夏へ | 初秋へ | 秋へ | 冬へ |
| トップページへ戻る |
■特徴・分布・生育環境
江戸時代に渡来したとされる外来種です。

落葉高木で高さ10mほど、しばしば20mほどになります。
樹皮は灰褐色です。成木では短冊状に剥がれます。

花は春に房状(散房花序)に咲き、淡黄色で小さく目立ちません。
  
葉は対生(対になってつく)で、カエデ科の特徴でもあります。ただし、他の科の樹木にも葉が対生のものもあるので「対生」であるということだけではカエデの仲間とは言えません。

葉は掌状に浅く3裂して、独特の形をしています。裂片の先は三角状で、葉の縁は成木では全縁(葉の縁のギザギザがない)で、葉の表面にはやや光沢があります。葉は晩秋に紅葉または黄葉します。

果実はプロペラ型で2枚の翼は鋭角でほとんど開いていません。この果実の角度はカエデの仲間を区別する際のよい目安になります。

時に「モミジ」と「カエデ」は別の種類であると誤解されますが、ともに「カエデ属」で同じ仲間です。
一般にカエデの仲間は、葉が5〜7深裂していると思われがちですが、ウリハダカエデやイタヤカエデなどでは浅裂する掌状ですし、ミツデカエデやメグスリノキでは3枚の小葉です。また、ヒトツバカエデやチドリノキでは、普通の葉っぱのような単葉で切れ込みはありません。
したがって、「イロハモミジ」の別名も「イロハカエデ」です。

多摩丘陵では、公園樹や街路樹などとして時に見かけます。

■名前の由来
「モミジ」の名は、木の葉が赤色や黄色になることを、奈良時代には「もみつ」と言い、そこから平安時代に「もみづ」となり、そこから「もみぢ」となったと言われています。
「唐」の名は、中国からの渡来種だからです。

なお、「カエデ」の名は、掌状の裂片の形態を「カエルの手」に例え、そこから「カエルデ」、さらに「カエデ」に転訛したものというのが一般的です。

また、「カエデ」の漢字に「楓」の字をあてますが、もともとは「楓(ふう)」はマンサク科の植物の名で、葉はカエデの仲間とは異なり互生(互い違いにつく)しています。モミジバフウなどが街路樹としてよく植栽されています。

■文化的背景・利用
「もみじ」は古い時代から日本人の心に深く響いていたようで、万葉集では138首にわたって詠われています。

しかし、万葉の時代には「モミジ」には「黄葉」の字があてられ、「紅葉」としたものは1首だけで、また特定の樹種を指す言葉でもなかったようです。
「もみじ」に「紅葉」の字が当てられるようになったのは平安時代以降のようです。

なお、万葉集から新古今和歌集、源氏物語や枕草子、あるいは江戸時代の文芸や句集などにも「モミジ」や「カエデ」が現れています。
源氏物語の「紅葉賀(もみじが)」に巻にはモミジが散りかう中で舞を踊る場面が出てきます。紅葉を挿(かざし)にしたとも描かれています。

また、江戸時代に貝原益軒によって編纂された「大和本草」をはじめとして各種の本草書に「モミジ」や「カエデ」の名が現れています。

■食・毒・薬
一般的にカエデ(モミジ)の仲間が有毒であるという報告も薬用にするという報告もないようです。食用にもしないようです。

ただし、仲間(同属)の日本特産のメグスリノキでは、その樹皮などを煎じて点眼薬や洗眼薬として利用します。
また、同じく仲間(同属)の北米原産のサトウカエデの樹液を煮詰めて砂糖(メープル・シロップ)をとります。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には似たものはありません。    
  
写真は「種子と葉」と「幹」の2枚を掲載
トウカエデ
トウカエデの種子と葉
トウカエデ
トウカエデの幹