タコノアシ(蛸の足)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

タコノアシ(蛸の足) ユキノシタ科タコノアシ属
学名:Penthorum chinense

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■特徴・分布・生育環境
環境省による準絶滅危惧種です。

タコノアシ(蛸の足)とは変わった名前ですが、数本の線形の花(果)穂を掌状に斜上させる様子をタコの足に見立て、それぞれの穂の内側に花(果実)を多く並べる様子をタコの足の吸盤に見立てたものです。

泥湿地〜浅い沼沢地に自生します。
水位が大きく変動するような場所を好みます。
多年草です。

初夏(多摩丘陵では5月)に新株を出します。
茎は直立し、普通は枝を分けません。
花期〜果期には、高さ80cm前後になります。
  
晩夏〜初秋(多摩丘陵では8月末〜9月)に、茎頂(花序)に花穂をつけます。
花穂は線形で長さ5〜7cmほどで、3本〜7本ほどを掌状に斜上させます。

花は、径5mmほどと小さく花穂に密に並びます。花穂の内側だけに偏って花をつけます。
花穂は当初は外向きに巻いていて、個々の花が開花するとともに伸びていきやがて真っすぐになります。

花に花弁はなくガク筒が5〜6裂しています。
花色は淡緑白色です。

秋には径7mmほどの果実をつけて、穂に密に並べます。
晩秋に、茎などとともに穂の全体が鮮やかに赤くなります。ただ、ほどなく茶褐色になり、やがて枯れていきます。

葉は、茎の下部〜花穂の下部まで、茎の周りにやや密に多くつけます。
個々の葉は、長さ7cm前後の披針形(両端が鋭三角形状の狭長楕円形)です。

植物分類としては、ユキノシタ科ではなく、ベンケイソウ科とすることもあります。
あるいは、タコノアシ科として独立させる説もあります。

本州以西〜中国大陸に分布します。
多摩丘陵では、自生は極く限られています。自生に適した湿生地が大きく減少したことに因ると考えられます。

■名前の由来
上述の通り、花(果)穂の態様を、吸盤のついた蛸(タコ)の足に見立てたものです。特に、秋の一時期に果穂を含めて全体が鮮紅色になり、特に果穂は茹蛸(ゆでだこ)によく似ています。

■文化的背景・利用
多くの歌集などには詠われていないようです。
江戸時代の本草書である「本草綱目啓蒙」、それに「物品識名」にその名が現れているとされます。

■食・毒・薬
多くの場合に薬用植物とされます。
ただし、薬効については諸説があり、明確には確認できていません。

食用にするという報告もあるようですが、これも確認できていません。

■似たものとの区別・見分け方
花期〜果期においては似たものはありません。
   
  
写真は「花期の穂」、「赤くなった果期の穂」
「果期の終期の穂」、「若い花期の穂」
「花期の全体」、「葉」と「若い個体」
の7枚を掲載
タコノアシ
花期の穂
タコノアシ
赤くなった果期の穂
タコノアシ
果期の終期の穂
タコノアシ
若い花期の穂
タコノアシ
花期の全体
タコノアシ
茎葉
タコノアシ
若い個体