スイセン(水仙)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

スイセン(水仙) ヒガンバナ科スイセン属
学名:Narcissus tazetta var. chinensis

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■特徴・分布・生育環境
室町時代に渡来したとされる地中海沿岸から中国原産の外来種です。
現在では、「ニホンズイセン」などと呼ばれ、伊豆の爪木アや越前海岸などに野生化した群生地があります。

一見するとユリ科の花に見えますが、ヒガンバナ科の多年草です。ヒガンバナと同様に全草が強有毒です。
  
厳寒期の12月〜2月頃に、高さ20〜40cmほどの花茎を出して数個の花をやや横向きにつけます。
花径は3〜4cmほどで、平開する白い花被片6枚と、花の中心に花被片の半分ほどの大きさの黄色の副花冠があります。

葉は、長さ20〜40cm、幅1〜1.5cmほどの葉先が円形の線形から帯状で、やや粉緑色を帯びます。
地下に、径2〜6cmほどの卵型の外皮が黒い鱗茎があります。
多くの園芸品種が作出されています。

多摩丘陵では、時々植栽されたものを見かけます。

■名前の由来
スイセンの名は漢名の「水仙」の日本語読みです。
「水仙」の名は、「仙人は、天にあるを天仙、地にあるを地仙、水にあるを水仙」と言う」という中国の古典から命名されたものであるというのが一般的です。
学名(属名)のNarcissus(ナルキッスス)は、ギリシャ神話からの命名です。水に映った自分の姿に恋をして見続けていたら1本の花になってしまった少年の名前から命名されています。その花がスイセンです。ナルシシストの語源です。

■文化的背景・利用
渡来したのが室町時代の頃なので、万葉集や古今集などの歌集や文芸などにはその名は現れていません。
江戸末期の古今要覧稿には、水仙は厳寒期に開花してくれて花期も長く、香りもよいのに歌にも詠われず辞典などにも載っていないのはこの花の不幸である、といった記述があります。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」にその名が現れています。また、芭蕉の句集にも数句で詠われています。

■食・毒・薬
全草に強い毒性があります。少量の葉でも、誤って食べると下痢などを惹き起します。
特に、鱗茎には強い毒性があり、誤って食べると、下痢、嘔吐、腹痛、痙攣や神経麻痺を惹き起し、死に至る危険があります。
鱗茎を磨り潰して湿布薬とするという報告がありますが、毒性が強いので一般での使用は危険です。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵に似たものはありません。    
  
写真は「花」(1)と「花」(2)の2枚を掲載
スイセン
スイセンの花(1)
スイセン
スイセンの花(2)