オオモミジ(大紅葉)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

オオモミジ(大紅葉) カエデ科カエデ属
学名:Acer amoenum

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■特徴・分布・生育環境
落葉高木で高さ10mほどですが、時に15mを越えます。花は春に房状に咲き、赤く小さく余り目立ちません。
樹皮は灰褐色です。
  
葉は対生(対になってつく)で、カエデ科の特徴でもあります。ただし、他の科の樹木にも葉が対生のものもあるので「対生」であるということだけではカエデの仲間とは言えません。

葉は掌状で深く5裂あるいは7裂します。裂片の先は鋭三角状で尾状に伸びていて、縁に細かい鋸歯(葉の縁のギザギザ)があります。葉は晩秋に紅葉します。
果実はプロペラ型で2枚の翼は内向きに鋭角、または鈍角に開いています。この果実の角度はカエデの仲間を区別する際のよい目安になります。

時に「モミジ」と「カエデ」は別の種類であると誤解されますが、ともに「カエデ属」で同じ仲間です。
したがって、「イロハモミジ」の別名も「イロハカエデ」です。

一般にカエデの仲間は、葉が5〜7深裂していると思われがちですが、ウリハダカエデやイタヤカエデなどでは浅裂する掌状ですし、ミツデカエデやメグスリノキでは3枚の小葉です。また、ヒトツバカエデやチドリノキでは、普通の葉っぱのような単葉で切れ込みはありません。

日本固有種です。日本各地(本州の太平洋側では青森県以南、日本海側では福井県以西)に分布します。
多摩丘陵では、個体数は多くありません。

■名前の由来
「モミジ」の名は、木の葉が赤色や黄色になることを、奈良時代には「もみつ」と言い、そこから平安時代に「もみづ」となり、そこから「もみぢ」となったと言われています。
「大(おお)」は、葉がイロハモミジに似ていてイロハモミジよりも大型であることからのようです。

なお、「カエデ」の名は、掌状の裂片の形態を「カエルの手」に例え、そこから「カエルデ」、さらに「カエデ」に転訛したものというのが一般的です。

また、「カエデ」の漢字に「楓」の字をあてますが、もともとは「楓(ふう)」はマンサク科の植物の名で、葉はカエデの仲間とは異なり互生(互い違いにつく)しています。モミジバフウなどが街路樹としてよく植栽されています。

■文化的背景・利用
「もみじ」は古い時代から日本人の心に深く響いていたようで、万葉集では138首にわたって詠われています。
しかし、万葉の時代には「モミジ」には「黄葉」の字があてられ、「紅葉」としたものは1首だけで、また特定の樹種を指す言葉でもなかったようです。
「もみじ」に「紅葉」の字が当てられるようになったのは平安時代以降のようです。

なお、万葉集から新古今和歌集、源氏物語や枕草子、あるいは江戸時代の文芸や句集などにも「モミジ」や「カエデ」が現れています。源氏物語の「紅葉賀(もみじが)」の巻にはモミジが散りかう中で舞を踊る場面が出てきます。紅葉を挿(かざし)にしたとも描かれています。
また、江戸時代に貝原益軒によって編纂された「大和本草」をはじめとして各種の本草書に「モミジ」や「カエデ」の名が現れています。

■食・毒・薬
一般的にカエデ(モミジ)の仲間が有毒であるという報告も薬用にするという報告もないようです。食用にもしないようです。
ただし、仲間(同属)の日本特産のメグスリノキでは、その樹皮などを煎じて点眼薬や洗眼薬として利用します。
また、同じく仲間(同属)の北米原産のサトウカエデの樹液を煮詰めて砂糖(メープル・シロップ)をとります。

■似たものとの区別・見分け方
多説に分かれているようですが、よく似ているオオモミジやヤマモミジをイロハモミジの変種とする説があります。
なお、ヤマモミジでは、葉柄の上面には溝があり、鋸歯(葉の縁のギザギザ)が粗く欠刻状であることで区別します。オオモミジでは葉がやや大きく鋸歯が細かく揃っていることで区別します。    
  
写真は「葉」と「幹」の2枚を掲載
オオモミジ
オオモミジの葉
オオモミジ
オオモミジの幹