■特徴・分布・生育環境
花時には、草丈1〜2mほどになる大型の多年草です。ただ、風などによって伏していることもあります。日当たりの良い草地〜林縁に自生しています。
「ヒナノウスツボ」よりも大型であるという命名ですが、生育条件によって草丈は様々なので草丈による区別は難しい。区別の仕方は後述の通りです。
初秋(多摩丘陵では8月)に、茎の上部の葉腋と茎頂に花茎を出します。葉腋の花茎は10cm前後、茎頂の花茎は20cm前後で、全体としては狭円錐塔状〜狭紡錘状の花穂になります。
花茎は枝分かれすることが多く、花茎の先に長さ1.5cm前後の花柄(小花柄)を1〜3個ほど出して花をつけます。花茎は密にはつかず、多くの場合ややまばらになります。
花は、長さ8mm前後、花径5mmほどの壺型で、全体に暗赤色です。花の先端から2個の黄色の雄蕊がのぞきます。
葉は、葉先が三角形状の長さ10cm前後の長卵型です。葉の葉脈は明瞭で葉縁には鋸歯(ギザギザ)があります。
果実は、先っぽが鋭円錐状の卵型です。
北海道南部〜九州、朝鮮半島に分布します。
多摩丘陵では、自生は極めて限られています。2014年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏によりある谷戸の奥での自生が確認されています。また、ある里山公園で数個体が保全植栽されています。
■名前の由来
大型のヒナノウスツボという命名です。「ヒナノウスツボ」は、「雛の臼壺」であるとするのが一般的になっています。
ただし、江戸時代に至るまでの多くの本草書や文献には「ヒナノウスツボ」の名は現れていないようです。どうもこの名前の出自は、よくわからないところがあります。
「雛(ひな)」は「花が小さくて可愛らしい」で、「臼壺」は「花の形が臼や壺に似ている」からということが多い。
しかし、「臼」と「壺」では形態がかなり異なり、特に「臼」の形態は半球形で、この花の形態とはかなり異なります。また、「うす壺」と呼ばれる「壺」は見当たりません。
地方名のひとつに「ウスツボ」の名があって、それが標準和名に採用された可能性があり得ます。その場合には、「うすつぼ」はまったく別の意味であったであろうと思われます。
■文化的背景・利用
江戸時代に至るまでの多くの本草書や文献には「ヒナノウスツボ」の名は現れていないようです。
また、万葉集や多くの和歌集には詠われていません。文学的にも記載はないようです。
■食・毒・薬
漢方で、この仲間を薬用にするということです。
したがって、有毒である可能性があり、食用にするのは避けるべきです。
■似たものとの区別・見分け方
この仲間(同属)は、互いによく似ていて見分け難いところがあります。ただし、ゴマノハグサだけは花色が黄緑色なので簡単に区別できます。
他のヒナノウスツボ、サツキヒナノウスツボとエゾノヒナノウスツボとの見分け方は以下です。
なお、ツシマヒナノウスツボとシコクヒナノウスツボとして区別されることがある種類はオオヒナノウスツボの種内変異であると考えられます。
○オオヒナノウスツボでは、茎に明らかな4本の稜(りょう:茎方向に盛りあがっている線状の筋)があり茎の断面は四角形です。花茎から枝分かれして花をつける花茎(小花柄)が短い。花柄は1.5cm前後です。
○ヒナノウスツボでは、茎に明らかな4本の稜(りょう:茎方向に盛りあがっている線状の筋)があり茎の断面は四角形です。花茎から分かれして花をつける花茎(小花柄)がひょろ長い。花柄は細長く2〜3cmほど、時に4cmほどで、見た目でもひょろ長く見えます。
○エゾヒナノウスツボでは、茎の4本の稜(りょう:茎方向に盛りあがっている線状の筋)の上に翼(膜状に盛りあがる)があります。花茎から枝分かれして花をつける花茎(小花柄)が短い。花柄は1〜1.5cmほどです。分布が北地(石川県以北、岩手県北部〜北海道)なので、多摩丘陵には自生はありません。
○サツキヒナノウスツボでは、花期が晩春〜初夏(4月末〜5月)なので区別できます。上記の3種では花期は8月〜9月です。なお、花は普通上部のみが暗赤色で中下部は黄緑色なので、花がほぼ全体に暗赤色である他の3種とは区別できます。
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写真は「花と果実」、「花の正面」、 「花穂:花柄が少ないもの)」と 「葉」の4枚を掲載 |
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花と果実 |
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花の正面 |
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花穂:花柄が少ないもの |
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オオヒナノウスツボの葉 |
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