| ■特徴・分布・生育環境
ブドウの名はありますが、ブドウの仲間（ブドウ属）ではなく「ノブドウ属」に分類されます。 日当たりのよい林縁やがけ地に、巻ヒゲで他の植物にからみついているツル性の落葉木本です。ただ、草本とする場合もあります。 晩夏〜初秋に径２〜３ｍｍほどの帯黄緑色の小さな花を小さな傘型（集散花序）につけます。花序は枝に比較的多くつけます。 小さな花の花被片は５枚ですが、開花してから比較的早く落ちてしまいます。 初秋に、ブドウのミニチュアのような径７ｍｍほどの緑色の球形の果実をまばらな穂状につけますが、秋には、ブドウタマバエやブドウトガリバチの幼虫が寄生し虫えいを作るので、一つの房に白・紫色・赤・青などと色とりどりの実をつけるのが大きな特徴です。正常な果実はまずありません。したがって、食用にはなりません。 葉はそれほど大きくはなく、径１０ｃｍ前後の卵型ですが、三から五つに浅裂または中裂するなど変異が大きい。葉裏は淡緑色で脈上に短毛があります。エビヅルやヤマブドウのように淡褐色の毛は密生しません。 しばしば、茎が赤褐色を帯びます。 日本各地に分布します。中国大陸にもこの種の変種がいろいろ分布します。 多摩丘陵では、里山ではツル植物は嫌われて除伐されることが多いので、個体数は少なく余り出会えません。 ■名前の由来 山野に生育する「ブドウ」という命名です。「ブドウ」の名は、西アジアで古い時代に「ブーダウ」と呼ばれていて、それが中国で「葡萄：プータウ」と呼ばれたことからであるという説があります。 なお、ブドウの古名は「エビ」です。 ■文化的背景・利用 ブドウの仲間（ブドウ属）は古い時代には古名「エビ」と呼ばれ、平安時代の「本草和名」や「倭名類聚抄」に「和名 衣比加都良（えびかづら）」などとして現れていますが、ノブドウは含まれていなかったと考えられています。 江戸時代の「本草綱目啓蒙」に「狩衣などを紫黒色に染めることをエビ染めと呼び、葡萄（ぶどう）の熟した果実の色に擬（たと）えたもの」といった記述があります。清少納言の枕草子にも「えびぞめ(葡萄染)」の記載があります。 ただ、ノブドウは江戸時代の「本草綱目啓蒙」にその名が現れているとのことです。 ■食・毒・薬 果実は、上述のようにブドウタマバエやブドウトガリバチの幼虫が寄生し虫えいになっているので、食用にはできません。 薬用にもしません。 ■似たものとの区別・見分け方 似た近縁のブドウ属には、エビヅル、サンカクヅルとヤマブドウがあります。多摩丘陵では、サンカクヅルとヤマブドウは未確認です。 ○エビヅルでは、葉は径２０ｃｍ前後の五角形状円形で、葉裏に淡褐色の毛が密生していて白っぽく見えるのが特徴です。 ○サンカクヅルでは、葉は長さ４〜９ｃｍ、幅４〜８ｃｍほどの三角形から卵状三角形です。これが「サンカクヅル」の名の由来です。葉の縁には浅い鋸歯があり、葉の基部は浅い心臓形なのが特徴のひとつです。エビヅルとは違い、葉裏にはほとんど毛はなく、葉脈上にまばらにある程度です。 なお、サンカクヅルには「古い時代に行者が山で修行するときに、サンカクヅルの蔓（つる）を切り、この蔓（つる）から出る水を飲んだ」という言い伝えがあり、ギョウジャノミズという別名があります。サンカクヅルの果実も食べられます。 ○ヤマブドウは、葉がエビヅルよりも一回り大きく、ほとんど切れ込まず、葉裏に淡褐色の毛が多く、褐色がかって見えるのが特徴です。ヤマブドウの果実はエビヅルの果実に似ていて食べられます。 ○このノブドウは、近縁ですが別属のノブドウ属で、葉は径１０ｃｍほどの葉先が鋭三角形状の卵形ですが、裂れ込みなどの変異が大きく、葉だけで見分けるのは難しいものがあります。エビヅルやヤマブドウでは葉の裏面に淡褐色から褐色の毛が密生していますが、ノブドウでは、サンカクヅルと同様に葉裏の脈上に短毛が生えている程度です。 ノブドウの果実には、ブドウタマバエやブドウトガリバチの幼虫が寄生し，虫えいをつくるので、一つの房に白・紫色・赤・青などと色とりどりの実をつけるのが大きな特徴です。正常な果実はまずありません。したがって、食用にはなりません。 植物学的には、エビヅル、サンカクヅルやヤマブドウ（ブドウ属）では花序は円錐花序（円錐塔状に見える）ですが、ノブドウ（ノブドウ属）では集散花序（平たい傘型に見えます）です。 |
| 写真は「熟した果実」、「若い果実」、「花」、 「花序」、「葉」と「葉裏」 の６枚を掲載 |
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| ノブドウの熟した果実 |
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| ノブドウの若い果実 |
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| ノブドウの花 （ところどころで開花） |
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| ノブドウの花序 |
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| 裂れ込みのない葉 |
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| ノブドウの葉裏 |