■特徴・分布・生育環境
普通は夏に花をつけるランの仲間の小型の多年草です。時に、春から咲いていて、秋に咲いている場合もあります。日当たりのよい丈の低い芝草地などに生育します。
花時に、草丈20cm〜40cmほどで、茎頂にとても細長い花穂(穂状花序)を立てて、ラセン状に長さ7mm前後の紅紫色の小さな花を多くつけるのが特徴です。なお、花序は右巻きのものと左巻きのものとがほぼ同じくらいあります。
根出葉(地際から出る葉)は線型で幅1cmほど長さ10〜20cmで、数枚を斜上させます。小さな鱗片葉が茎に圧着していますが、ほとんど目立ちません。
日本各地から北東アジア・ヒマラヤに分布します。
多摩丘陵では、2010年現在、この20年ほどの間に個体数を減らしているようで、なかなか出合えません。しかし、2015年では、住宅地周辺の法面などに見かけることが多くなってきています。
■名前の由来
花穂にラセン状につく花の様子から「捩(ねじ)花」です。
別名の「モジズリ」は、以下の通りです。
■文化的背景・利用
小倉百人一首の有名な一首「みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに」河原左大臣 源融(とおる)に詠われている「モヂズリ」は、しばしば「ネジバナ」(捻花)を指すと言われます。確かに「ネジバナ」の別名は「モジズリ」(捩摺)ではあります。
ネジバナの花が、花茎にラセン形によじれて付く様子を、身をよじるほどの恋心にたとえたものであるとの解釈です。
しかし、実際には陸奥国信夫(しのぶ)郡(現在の福島市内)の特産であった、絹布に捩れるように染色した織物「信夫毛地摺」(しのぶもぢずり)を指しているようです。植物の色素を布に摺りつけて捩れたような模様をつけた織物で、いわゆる草木染です。
また、万葉集でも、ネジバナを「ねっこ草」などと呼んでいたようで「モヂズリ」の名は使われていません。
この絹織物は、奈良時代から平安時代には朝廷に献上されていたようで、その産地の名前から「信夫毛地摺」と呼ばれるようになったようです。
冒頭の和歌は、一部は異なっていますが古今和歌集に採録されている「みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れむと思ふ 我ならなくに」源融なので、平安時代前期という時期を考慮すると、やはりこの「もぢずり」は「信夫毛地摺」を指すと考えるほうが妥当なようです。「しのぶ」は「信夫」に「忍ぶ」や「偲ぶ」をかけた言葉のようです。したがって、この和歌は、「信夫毛地摺の模様のように心が乱れる」と解釈するのが正しいようです。
モジズリの別名は、後の時代にネジバナのラセン形の花序をこの織物の捻れたような模様になぞらえたもののようです。
江戸時代には「本草綱目啓蒙」に「モヂズリ一名ネジバナ」とされています。
■食・毒・薬
有毒であるという報告も薬用にするという報告もないようです。食用にもしません。
■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には似たものはありません。
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写真は「花」と「花穂」の2枚を掲載 |
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ネジバナの花 |
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ネジバナの花穂 |
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