■特徴・分布・生育環境
寄生植物です。初秋〜秋の始めにだけ花茎を出します。イネ科のススキなどの植物の根に寄生する1年草です。
比較的人の営為に近い場所(小道脇など草刈や踏みつけなどの撹乱が多い場所)に自生することが多い。草陰になっていることがほとんどなので見つけ難いところがあります。
長い間、自生する環境を誤解していて見つけられずにいましたが、東京都の中島氏に教えていただいてやっと確認できました。
初秋〜秋の始めに、地上に花だけを出しているように見えます。寄生植物なので地上には明瞭な葉はなく、ごく小さな鱗片葉がわずかにあります。
丈は10cmほど、時に20cmほどあります。花色は淡紅紫色〜紅紫色で、花容は筒型で、先端が唇形に小さく開きます。花は、長さ3cm前後で、横向きまたはやや下向きにつけます。
オオナンバンギセルは、別種でやや大型ですが、個体変異もあるので大きさだけでの区別は難しいところがあります。後述するようにガク片の形や花弁の縁の歯牙などで区別します。
日本各地〜東アジア〜インドに広く分布します。
多摩丘陵では、林縁などに自生しますが、2013年現在では自生地は少ないようです。
■名前の由来
安土桃山時代に渡来したとされる「キセル(煙管):喫煙の道具」に花容が似ていることから、南蛮(東南アジアなど)から渡来した「煙管」の名が与えられたようです。
それまでは「思い草」と呼ばれていたようです。これはススキなどの下にやや俯き加減に咲く様子を「物思いにふける様子」にたとえたものとするのが一般的です。
■文化的背景・利用
人の営為に近い場所でよく見られることから、古い時代から「思い草」として親しまれていたようです。
万葉集の「道の辺の 尾花がした(下)の 思ひ草 今さらさらに なにか思はん」の「思ひ草」は「リンドウ」であるという説がありますが、「尾花(すすき)の下」ということからは「ナンバンギセル」説のほうが有力なようです。
その後の新古今集などの和歌に現れている何首かで「思い草」が詠われています。
多くの本草書などには、思い草やナンバンギセルの名は現れていないようです。
■食・毒・薬
強壮、消炎や鎮痛の効果あるとされることがありますが、一般的ではないようです。
食用にはできません。
■似たものとの区別・見分け方
よく似たオオナンバンギセルは仲間(同属)ですが見分けるのは結構困難です。通常オオナンバンギセルはナンバンギセルよりもやや大型であるとされますが、個体変異もあるので大きさだけでの区別では確信は持てません。
ナンバンギセルでは、花の基部のガク片は三角形状ですが、オオナンバンギセルではそのようには尖りません。また、オオナンバンギセルの花冠裂片には歯牙(細かいギザギザ)があることが普通です。
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写真は「花期の全体」、「花(1)」と 「花(2):しばしば群生する」の3枚を掲載 |
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ナンバンギセルの花期の全体 |
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ナンバンギセルの花(1) |
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ナンバンギセルの花(2) (しばしば群生する) |
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