モミ (樅)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

モミ (樅) マツ科モミ属,
通称:モミノキ 学名:Abies firma

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■特徴・分布・生育環境
日本固有種です。本州以西の低山からブナ帯まで広く分布します。
常緑高木で、高さ25m、幹径1.5mにもなります。樹皮は灰白色で平滑ですが、しばしば浅く割れます。樹冠は円錐形です。

マツの仲間で、マツ同様に裸子植物です。いわゆる針葉樹です。
  
3年に一度ほど開花結実します。初夏に小さな紡錘型の雄花を枝先に下向きに多くつけます。
果実(球果)はマツボックリの固い時期のもののような円柱形で枝の上側に上向きにつけます。長さ6〜10cmほど、径3cmほどもあります。
秋に熟して、長さ1cmほどで翼のある種子を飛散させます。

葉は長さ3cm前後の線形で、上部の葉や日の当たる葉では枝にラセン形につき、若木や日の当らない葉は枝に2裂に密に並びます。
若木や日の当らない葉の先が小さく2裂(二又)しているのが特徴です。上部や日の当たる葉では葉先がやや凹む程度です。

しばしば「モミノキ」と呼ばれますが、標準和名は「モミ」です。
多摩丘陵では、稀に大径木があり、古い時代には普通に自生していたと推定されます。ただ、多摩丘陵は里山なので、針葉樹は人によって除伐されてきていた可能性があります。

■名前の由来
古い時代に「オミノキ(臣の木)」と呼ばれていて、そこから「モミ」となったという説がありますが、一般的ではありません。いずれにしても「モミ」の名の由来はよくわかっていないようです。

■文化的背景・利用
万葉集に古名「臣(おみ)の木」として現れているとされています。
平安時代の本草書「倭名類聚抄」の「樅」に「和名 毛美(もみ)」として既に現れています。
江戸時代の貝原益軒による本草書「大和本草」に「樅(モミ)」が現れています。

材は、白く軽くて柔らかいので、木箱や建築・器具材に利用されます。

クリスマスツリーとして欧米で使われるのはヨーロッパモミです。整った円錐形の樹冠がツリーに適しています。

■食・毒・薬
明確に有毒であるという報告はありませんが、食用にはできません。薬用にもしません。

■似たものとの区別・見分け方
〇似た仲間(同属)のウラジロモミは、標高1,000mを越えるブナ帯から亜高山帯に生育し、葉先は少し凹むだけです。葉裏の二本の白い気孔線が明らかです。モミでは気孔線は目立ちません。

〇枝葉の印象が似ているイヌガヤでは、葉先は2裂や凹んだりはせず、鋭三角形状に尖っています。ただ、触っても痛くありません。いずれにしてもイヌガヤ科で全く別種です。

〇名前や枝葉の印象がイヌガヤに似ている「カヤ」は、イチイ科で全く別種です。イヌガヤの葉先は触っても痛くありませんが、カヤの葉先は硬くてさわると痛いことで区別できます。

〇ツガの枝葉も似ていますが、線形の葉の長さが1〜2cmほどと短いので区別できます。なお、ツガによく似たコメツガは亜高山帯に生育します。

分布域的にはイヌガヤやツガが多摩丘陵にも自生する可能性がありますが、未確認です。    
  
写真は「葉」と「幹」の2枚を掲載
モミ
モミの葉
モミ
モミの幹