メギ(目木、眼木)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

メギ(目木、眼木) メギ科メギ属
別名:コトリトマラズ 学名:Berberis thunbergii

| 総索引へ戻る |
写真一覧表の| 早春へ | 春へ | 夏へ | 初秋へ | 秋へ | 冬へ |
| トップページへ戻る |
■特徴・分布・生育環境
高さ1〜1.5mほど、時に2mほどになる落葉の低木です。薬用に利用されることから枝・葉や果実は有毒であると考えられます。

普通は主幹を作らず地際から細い幹を数本叢生させます。
幹(枝)は長く伸びて枝垂れるようになります。

樹皮は、灰白色で縦方向に裂け目が入ります。
幹(枝)には、ややまばらですが縫い針のように細長い(長さ1cm弱)トゲがあるので注意が必要です。

多くの幹(枝)が密に覆うように枝垂れているので半球形の樹形になります。
また、枝垂れる幹(枝)には小さい葉が、幹(枝)に沿うように密に多くついているので余計に樹形が半球形に見えます。

春(4月)に、先端から基部にわたり幹(枝)いっぱいに小さな花を並べるように多く下垂(時にやや横向き)させます。
花径は6mmほどで、花色は(やや淡い)黄色です。

花は、ガク片が花弁状に色づき花の外側の花被片を形成し、その内側に僅かに小さい花弁が杯状〜椀状に花被片を形成しています。
そのせいで重弁花のように見えます。
花被片は外側のガク片も内側の花弁も普通は6枚ですが、それよりも多いこともあります。

黄色の花で多くつくので目立ちそうなものですが、花が小さくまた葉陰になるせいか注意していないと見落しがちになります。

葉は、大小がありますが、葉先が円形〜鈍三角形状で、多くは幅1cmほど、長さは2cmほどです。
ただ、葉は葉柄に向かって細くなっていくので、見た目では葉身は長さ1.5cmほどです。そのせいか葉は丸っこい見た目です。

果実は小さく枝から下垂させます。果実そのものは長さ6mm前後の紡錘形で、秋に赤熟します。
多摩丘陵では、2017年に始めて果実を確認できました。
果実は、枝いっぱいに数多く並べることもありますが、ポツンポツンと少数がつくだけの場合もあります。

果実は有毒ではないとされていますが、食べても不味いようです。
  
本州の東北地方南部〜四国・九州に自生します。日本固有種です。
多摩丘陵では、2017年現在ではある保全地域でのみ確認できているだけです。ただし、古い時代に植栽されていたものが逸出したものである可能性があります。

■名前の由来
古い時代に枝の材などを煎じて洗眼薬(充血や炎症など)として利用したことから「目木」となったというのが定説です。
別名の「コトリトマラズ」は、以下のような異名からです。

江戸時代の本草書に、「メギ」の名の他に「ヨロイドオシ」、「ヘビノボラズ」、「コトリトマラズ」や「ヘビスワラズ」など多くの異名があり、鋭いトゲがあることからの名であると考えられます。
古い時代から身近な存在であったようです。

似た名の「メグスリノキ」は、同じように洗眼薬として利用されますが、カエデ科の落葉高木で全く別種です。

■文化的背景・利用
万葉集を始め多くの歌集や文芸等にはその名は現れていないようです。

平安時代の本草書「本草和名」にその名があるという説がありますが、確認できてはいません。
小野蘭山による江戸時代の本草書「本草綱目啓蒙」に多くの異名とともにその名が現れています。

上述の通り古い時代から身近な存在であったようで、縫い針のような鋭いトゲがあることから「コトリトマラズ」、「ヘビノボラズ」や「ヨロイドオシ」などの異名が多くあります。

また、枝などの材などにアルカロイド(ベルベリンなど)を含み、古い時代から目薬や健胃薬などとして利用されてきたようです。

■食・毒・薬
上述のようにベルベリンなどのアルカロイド成分を含んでいて薬用に利用されてきています。
したがって、食用にはしません。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵ではメギ以外には自生を確認していませんが、日本に自生するこの仲間(メギ属)は互いによく似ていて見分け難い。
これらは、花は互いに似ています。また、葉の大小が少しあるのですが見た目で大きさを判断することは困難です。
見分けるポイントは、花のつき方(花序の態様)や花序の花数、葉の縁の様子(全縁・刺毛)などです。

メギでは、花序(花ではなく)に柄はなく3個ほどの花を花柄の先につけます。葉は「全縁」(葉の縁にギザギザや刺毛はない)です。

オオバメギ(大葉目木)では葉はメギよりも少し大きいのですが見た目での判断は難しい。
オオバメギでは花柄の先で3〜6個(時に8個)の花柄を分けてその先に花をつけ(花序に柄がある)ます。ただ、葉の縁はメギと同様に全縁です。

ヒロハヘビノボラズ(広葉蛇上らず)ではオオバメギと同様に葉はメギよりも少し大きいのですが見た目での判断は難しい。
ヒロハヘビノボラズでは花柄の先で10〜16個ほどに花柄を分けてその先に花をつけます。小さなブドウの房のような見た目です。
葉の縁にはメギやオオバメギとは異なり「刺毛」が密に並んでいます。

ヘビノボラズ(蛇上らず)では、葉の大きさはヒロハヘビノボラズと同じくらいで葉の縁の刺毛もヒロハヘビノボラズと同じです。
しかし、ヒロハヘビノボラズとは異なり花序の花数は少なく花柄の先で3〜5個ほどに花柄を分けてその先に花をつけます。
また、決定的とは言えませんが、ヘビノボラズは他の仲間とは異なり樹高が60〜80cmほどと小さい。

なお、名前がどことなく類縁関係を思わせるメグスリノキ(目薬の木)は、カエデ科で全く別種です。
メグスリノキは高木になり、葉は三出複葉で葉先は鋭三角形状です。
メギと同様に目薬に利用されます。    
  
写真は「枝垂れる枝と花」、「花と葉」、「花」
「全体」、「トゲの様子」と「幹」の6枚を掲載
メギ
メギ:枝垂れる枝と花
メギ
メギの花と葉
メギ
メギの花
メギ
メギの全体
メギ
メギの果実
メギ
メギの果実(複数)
メギ
メギのトゲの様子
メギ
メギの幹