■特徴・分布・生育環境
環境省指定の絶滅危惧II類(絶滅の危機が増大している種)です。
後述するように「秋の七草」のひとつであるとされています。
草丈50cmほどで、しばしば1m近くになります。日当たりのよい草地を好みます。太い根茎があります。
花は、晩夏から初秋に咲き、茎頂に数個つき、径5cmほどで花冠は広鐘型で先は5裂します。
花色は普通青紫色ですが、淡紫色から白色まで変異があります。
葉は、長さ4〜7cmほどの狭卵形で葉先は三角形状です。
日本各地から東北アジアに分布します。
多摩丘陵では、遠い昔は判りませんが、2010年現在、40年以上前から既に自生は確認されていません。
まれに、人家周辺に保護されて植栽されていることがありますが、園芸品種である可能性があります。
■名前の由来
キキョウの名は、中国名の桔梗の呉音ケチキョウからの転訛であるとされています。
■文化的背景・利用
万葉集の山上憶良の歌、
「秋の野に 咲きたる花を 指(おゆび)折り かき数ふれば 七種の花」
「萩が花 尾花(すすき) 葛花(くず) なでしこの花 おみなえし また藤袴(ふじばかま) 朝貌(あさがお:ききょう)の花」
が、「秋の七草」の起源となっています。
キキョウが万葉の時代から親しまれていたことをうかがわせます。
万葉集に5首ほどあり、
「こいまろび 恋ひは死ぬとも いちしろく 色には出でじ 朝顔の花」
等があります。
なお、万葉時代の「あさがお」は、ヒルガオやムクゲであるという説もありますが、現在ではキキョウであるというのが通説になっています。
源氏物語や枕草子にも既に「ききやう」の名が現れています。
多くの本草書にもその名が現れています。
なお、明智光秀の家紋としても知られています。
お正月に飲む「お屠蘇」に使用する屠蘇散の材料のひとつとして、サンショウや防風などとともに生薬「桔梗根」が用いられます。
■食・毒・薬
太い根の外皮をむいて天日乾燥させるか、細く刻んで風通しのよい場所で乾燥させたものが生薬「桔梗根」で、古くから去痰(きょたん)や鎮咳(ちんがい)に用いられています。
根等を茹でて、よく水に晒して毒抜きし、救荒植物とされたとのことです。
■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵に、似たものはありません。
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写真は「花」と「花と葉」の2枚を掲載 |
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キキョウの花 |
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キキョウの花と葉 |
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