カワラナデシコ(河原撫子)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

カワラナデシコ(河原撫子) ナデシコ科ナデシコ属
別名:ナデシコ(撫子) 学名:Dianthus superbus var. longicalycinus

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■特徴・分布・生育環境
環境省指定の絶滅危惧種です。単に「ナデシコ」とも呼ばれます。
植物学的には、本州中部以北に分布するエゾカワラナデシコを基本種とする変種です。

後述するように「秋の七草」のひとつです。
茎も葉も細く繊細な草姿で、草丈40cm〜80cmほどになります。
本来は日当たりのよい草地や川原などに生育します。近年では見かけることはまずありません。

夏の終わりから初秋にかけて、茎頂で花柄を分け、径5cm前後の淡紅紫色の花を数個つけます。
花弁の先は細かく裂けて糸状になります。

本州から朝鮮半島・中国大陸・台湾に分布します。
多摩丘陵には、自生のものはあったかもしれませんが、1960年代にはもう既に確認できなくなっていたようです。

■名前の由来
古い時代には、単に「なでしこ」と呼ばれ「なでるようにして大切にあつかう子ども」の意味であるというのが一般的です。

■文化的背景・利用   
「秋の七草」のひとつです。万葉集の山上憶良の歌、
「秋の野に 咲きたる花を 指折り(おゆびおり) かき数ふれば 七種(ななくさ)の花」
「萩の花 尾花葛花 撫子(なでしこ)の花 女郎花(おみなえし) また藤袴 朝貌(あさがお)の花」
が、秋の七草の起源とされています。

同じ万葉集に何首か詠われていて、
「野辺見れば なでしこの花咲きにけり わが待つ秋は 近づくらしも」
等があります。
清少納言の「枕草子」にも「うつくしきものは なでしこの花」と称えられています。
その他にも源氏物語や徒然草など多くの文芸にも現れています。

江戸時代にも「霜の後 撫子さける 火桶哉」芭蕉
など、多くの文芸に現れています。

日本女性の優美さを称える「大和撫子(やまとなでしこ」の言葉は、古今和歌集の、
「我のみや あはれと思はん 蛬(きりぎりす) なくゆふかげの やまとなでしこ」
が最初であると言われています。
当時、中国から渡来していた「唐撫子(からなでしこ)」に対比させて「やまとなでしこ」とされたようです。
その後、カワラナデシコの繊細な草姿と優美な花を、日本女性にたとえるようになったもののようです。

平安時代の「本草和名」や「倭名類聚抄」に「和名 奈天之古(なでしこ)」などとして現れています。
江戸時代の「本草綱目啓蒙」にナデシコ、カワラナデシコやヤマトナデシコなどの名が現れています。

■食・毒・薬
開花期の全草を乾燥させたものを生薬「瞿麦(くばく)」と呼び、煎(せん)じて利尿や月経不順など用いるようです。
また、種子を乾燥させたものを生薬「瞿麦子(くばくし)」と呼び同様に用います。
若い苗をつんで、熱湯でゆで水にさらしてアクを抜き、あえものや煮物などにして食用にします。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には、似たものはありません。    
  
写真は「花」、「花と葉」と「葉と茎」
の3枚を掲載
カワラナデシコ
カワラナデシコの花
カワラナデシコ
カワラナデシコの花と葉
カワラナデシコ
カワラナデシコの葉と茎