カタクリ (片栗)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

カタクリ (片栗) ユリ科カタクリ属
学名:Erythronium japonicum

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■特徴・分布・生育環境
「春の妖精」(スプリング・エフェメラル)と呼ばれる一群の植物のひとつです。
早春に地上に姿を現し、開花・結実して初夏には地上から姿を消します。
このように春の一瞬にだけ姿を現わすので「春の妖精」です。

花をつける株では、長さ6〜12cmほどの葉を2枚出します。
その中心から高さ10〜20cmの花茎を立て、茎頂に1個の花をほぼ下向きに開きます。
紅紫色の花被片は長さ5cmほどで後方に強く反り返ります。
花の中心にはW字型の濃紫色の斑紋があるのが特徴です。

葉は、長さ6〜12cmほどの長楕円形で葉先は三角形状です。
葉には暗紫色の斑紋があるのも特徴です。
  
種子から芽生えてから最初の7〜8年は1枚の葉だけを出し花はつけません。

地下に、筒状紡錘型の長さ5cm前後の鱗茎(球根)があります。
この鱗茎は、毎年更新され鱗茎の下に新しい鱗茎が作られるために毎年地下深くに潜り、7〜8年後の花時には地下20〜30cmにも達します。
やや湿性のある北向きの落葉樹林の林床にしばしば群生します。

日本各地から北東アジアの温帯から冷温帯に広く分布します。
多摩丘陵では、ごく一部の限られた場所で保護されているのみになっています。

■名前の由来
カタクリは古い時代にはカタカゴ(堅香子または傾籠)と呼ばれていて、うつむいて咲く花を「傾いた籠」に例えたものであり、カタカゴからカタクリに転訛したという説が一般的です。
ただし、花を付けないカタクリの葉の模様が鹿の子に似ているとして「片葉鹿の子」となり、それが「カタカゴ」となり、そこから転訛して「カタクリ」となったという説もあります。

■文化的背景・利用
万葉集に、
「もののふの 八十娘子らが 汲みまがふ 寺井の上の かたかごの花」
の歌があり、この「カタカゴ」はカタクリであるとされています。
ただ、このカタカゴはコバイモであるという説もあります。

江戸時代の小野蘭山による「本草綱目啓蒙」のカタカゴやカタクリなどの名が現れています。

鱗茎からは良質のデンプンがとれ、「片栗粉」として古くから「薬用や食用」にされてきています。
ただ、現在の「片栗粉」はジャガイモのデンプンから作られています。

■食・毒・薬
鱗茎のデンプンを片栗粉として食べるほかに、花や葉を、軽く茹でて冷水の晒して、おひたし、天ぷらや和え物などにして食用にします。

片栗粉は、すり傷や湿疹(しっしん)などにデンプンを患部にふりかけて外用薬とするほかに、かぜ、下痢や腹痛の後の滋養に、片栗粉に水と砂糖を適量加えてよくこね、熱湯をいれて内服します。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵に、似たものはありません。    
  
写真は「花」(1)、「花」(2)と「全体」
の3枚を掲載
カタクリ
カタクリの花(1)
カタクリ
カタクリの花(2)
カタクリ
カタクリの全体