カラスノエンドウ (烏野豌豆)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

カラスノエンドウ (烏野豌豆) マメ科ソラマメ属
標準和名:ヤハズエンドウ(矢筈豌豆) 学名:Vicia angustifolia

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■特徴・分布・生育環境
カラスノエンドウは、一般的な呼び名で、植物学的な標準的な和名は「ヤハズエンドウ(矢筈豌豆) 」です。ツル性の1年草です。
「エンドウ(豌豆)」の名はありますが、エンドウ属ではなくソラマメ属です。
  
春から初夏にかけて長さ1.5〜2cmほどの紅紫色のマメ科特有の蝶型花を葉腋に多くつけます。
草丈は、春は30〜40cmほどですが、ツルを伸ばして1m前後にまでなります。

葉は、羽状複葉(葉軸の左右に12対ほどの小葉を並べる)で、葉の先端は普通は巻きひげになっています。
果実は、サヤエンドウのような形で、長さ5cm前後です。
晩春から初夏にかけて果実をつけ、夏の終わりには黒熟して裂開します。

本州以西からユーラシア大陸に広く分布します。
多摩丘陵では、草地や畑のそばなどによく見かけます。

■名前の由来
一般名のカラスノエンドウの名は、野原に生える「豌豆(エンドウ)」で、人には利用されないことから「カラス」と冠されたようです。
標準的な和名のヤハズエンドウの「矢筈」は、弓矢の矢の基部の弦につがえる部位のことです。小葉の先端が若い葉では「矢筈」型(くの字)に窪んでいることからの命名です。

■文化的背景・利用
エンドウマメは、古代ギリシア/エジプトの時代から栽培されていたと言われています。日本には9世紀ごろに中国を経て渡来したようです。
カラスノエンドウも当時には食用に栽培されたようですが、早い時期に栽培はされなくなったようです。
ただし、エンドウマメはエンドウ属で、カラスノエンドウはソラマメ属で別属です。
なお、万葉集や歌集などには現れていないようで、知られた詩歌はないようです。
いくつかの本草書にはその名が現れています。

仲間(同属)に、草姿がずっと小さく、花も長さ4mm前後ととても小さい「スズメノエンドウ」があります。
さらに、花の長さが7mm前後でカラスノエンドウとスズメノエンドウの中間くらいなので「カラス」と「スズメ」の「間」という意味で「カスマグサ」という冗談のような名前の仲間があります。

■食・毒・薬
全草を乾燥させたものは、胃炎に効能があるとされています。。
若葉や若い果実は、茹でてさらして、和え物や汁の実、あるいはそのままテンプラなどにして食用にします。

■似たものとの区別・見分け方
スズメノエンドウは、花が白紫色で長さ4mm前後と小さいことで容易に区別できます。
カスマグサは、花色が淡青紫色で長さ7mmほどと小さいので容易に区別できます。
スズメノエンドウもカスマグサも、多摩丘陵ではまだ確認できていません。    
  
写真は「花」、「花と葉」、「全体」と「果実」
の4枚を掲載
カラスノエンドウ
カラスノエンドウの花
カラスノエンドウ
カラスノエンドウの花と葉
カラスノエンドウ
カラスノエンドウの全体
カラスノエンドウ
カラスノエンドウの果実