イチヤクソウ(一薬草)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

イチヤクソウ(一薬草) イチヤクソウ科イチヤクソウ属
学名:Pyrola japonica

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■特徴・分布・生育環境
花時(果実時)には高さ15〜25cmほどの常緑の草本です。
東京都の中島氏からのご連絡で、やっと自生を再確認できました。

多くの場合、比較的人里に近い低い丘陵地に自生しています。
やや明るい落葉樹林の林床に自生します。
ただ、常緑の葉は地面に張り付いたようになっているので、他の草やササなどがほとんど生えないような場所で、落葉がそれほど積み重ならない場所を好むようです。
したがって、丘陵地の谷筋ではなく小尾根筋に自生することが多い。

葉(根生葉)は、長さ3〜6cm、幅2〜4cmほどの広楕円形で、暗緑色です。
葉脈に沿った部分の色がやや淡い緑黄色なのが特徴です。
葉縁には細かい鋸歯(葉の縁のギザギザ)がありますが目立ちません。

夏(多摩丘陵では6月に入るころから6月中旬ごろ)に、高さ15〜25cmの花茎をほぼ直立させて、広鐘型の花を3〜10個ほどつけます。
ただ、花期は10日間ほどなのでタイミングを逸すると出会えません。
花色は白色で径1cm強、花はほぼ下向きにつきます。
花柱(メシベ)が相対的に太く花冠から湾曲しながら突き出しているのが特徴のひとつです。

果実は大きさ5mm強の偏球形で、花柱が残り長く突き出しているのが特徴のひとつです。
果実には畝が入り、つぶれたコブシのような形に熟します。
  
日本各地から朝鮮半島・中国大陸東北部に分布します。
多摩丘陵では、ところどころに自生があるとのことですが、個体数は多くなく、2013年現在では個体数が減ってきているとのことです。

■名前の由来
民間で、全草を1本まるごと乾燥させて薬用にすることから「一薬草」となったという説が一般的です。

■文化的背景・利用
万葉集や多くの和歌集には詠われていません。文学的にも記載はないようです。
江戸時代の本草書「本草綱目啓蒙」には「イチヤクソウ」の名が現れているとされています。

■食・毒・薬
全草を日陰干ししたものが生薬「鹿蹄草(ろくていそう)」で、強心、血圧の降圧や抗菌などの作用があるとされています。
ただし、民間での安易な利用は避けるべきです。
このような作用があるため食用にはできません。

■似たものとの区別・見分け方
この仲間や近縁種は、互いに似ていて区別が難しい種です。8種ほどがありますが、多くの種が亜高山帯〜北地に分布します。

ジンヨウイチヤクソウでは、葉の葉脈に沿って明瞭な白班が入るのが特徴です。
また、葉の長さよりも幅の方が広いのも特徴です。多摩丘陵での自生はないようです。

マルバノイチヤクソウでは、葉はジンヨウイチヤクソウに似ていますが、白班はないか不明瞭です。 ,br>多くの場合、花茎が赤味を帯び、また花がやや赤味を帯びます。多摩丘陵での自生はないようです。

ベニバナイチヤクソウは、名の通り花色が淡紅色です。
やや冷涼な気候を好むようで本州中部では標高1,000mほどの場所に自生します。

なお、多摩丘陵にはごく稀に、近縁(別属)のウメガサソウが自生していますが、ウメガサソウでは茎の中程に小さな葉(長さ3cmほど、幅1cmほど)を数枚つけること、花の花柱(メシベ)がイチヤクソウでは相対的にやや太く花冠から突き出しているのに対してウメガサソウでは花柱は目立たないことで区別できます。    
  
写真は「花期の全体」、「花(下から見た場合)」
「果実」と「葉」の4枚を掲載
イチヤクソウ
イチヤクソウの花期の全体
イチヤクソウ
花(下から見た場合)
イチヤクソウ
イチヤクソウの果実
イチヤクソウ
イチヤクソウの葉