ヒトツバハギ(一葉萩)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ヒトツバハギ(一葉萩) トウダイグサ科ヒトツバハギ属
学名:Securinega suffruticosa var. japonica

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■特徴・分布・生育環境     
落葉低木で、高さは2mほどです。雌雄異株です。
明るい林縁に自生します。全体に有毒です。
東京都の中島氏からご連絡をいただいて、始めてその存在を知りました。

名に「ハギ」がありますが、マメ科の「萩」の仲間とは全く無縁で、トウダイグサ科です。

枝をよく分けます。枝は細長く、ほぼ水平に広がりますが、しばしばややしだれます。

葉は、比較的小さく、長さ2〜3cmほど、幅0.7cmほどの長楕円形状です。
ただ、時に長さ5cmほどの葉もあります。
葉先は鈍三角形状〜やや円形で、葉の縁は全縁(ギザギザが無い)です。   
葉の付き方は、一見すると羽状複葉に見えますが単葉で、長い枝の両側に交互(互生)に行儀よく並びます。

夏に、枝の葉腋ごとに小さな花房を密に並べます。ちょっと見た目では、ごく小さな花が枝一面にへばりついているように見えます。
ただ、雌株の雌花は、ややまばらにつき、花柄があるのでやや下向きになります。

花は、径5mm未満の淡黄緑色です。花弁はなく、ガク片がごく小さな花弁のように見えます。

雄花は、10個ほどが束生し、花柄がやや短いので枝にくっついているように見えます。
雄蕊が花冠から突き出ています。なお、観察できた範囲では、ツボミをつけてから開花までに一ヶ月ほどもかかるようです。 ,br>
雌花は、多くは3個ほどが束生し、花柄が1cmほどあって、明らかな花柄があるように見えます。

果実は、径5mmほどの偏球形で三つの溝があります。
枝に沿って比較的多く並べ、下垂させます。

ただ、多摩丘陵では個体数が大変少なく、雌雄異株でもあるので、観察機会が少なく、花期を含めて生態はまだ充分には掴めていません。
雄株の雄花がまだ開いていない時期に、雌株では果実をつけていることがあるところから、どうも開花時期にはバラつきがあるようです。
また、開花時期の確認報告にもかなりのへだたりがあります。

これらのことから、個体に起因するものかは明確ではありませんが、どうも5月下旬には開花していることもあれば、6月に開花するもの、また、7月下旬に開花するものなどがあるようです。花の期間はやや長く、1〜2週間ほどです。
比較的長距離を飛翔できる訪花昆虫がかなり頻繁に訪れているので、雌雄の株が離れていても受粉できるのかもしれません。
したがって、今後の継続観察結果によっては、上記の記述が変わるかもしれません。

関東地方と近畿以西〜朝鮮半島に分布しています。ただ、個体数は多くないようです。
多摩丘陵では、個体数が極めて少なく、2014年現在、確認情報もまだ5〜6件ほどしかないようです。

■名前の由来
比較的小さな葉の形態が、ハギの仲間の小葉に似ているとして「ハギ」です。
ハギの仲間では普通三出複葉であるのに対して単葉なので「ヒトツバ」とされたとするのが一般的です。

どこか無理があるような命名ですが、似たような命名は他にもあります。
ヒトツバカエデは、名の通りカエデ(モミジ)の仲間で、葉に裂れ込みがなく、普通の単葉なのでヒトツバカエデです。
また、モクセイ科のヒトツバタゴは近縁で複葉であるトネリコ(別名:タゴ)に対して単葉であるので「ヒトツバタゴ」とされたようですが、こちらもちょっと無理な命名のような気がします。
なお、ヒトツバタゴは別名の「ナンジャモンジャ」でよく知られています。

■文化的背景・利用
知られた詩歌や文芸など、あるいは本草書などにはその名は現れていないようです。

■食・毒・薬
全体に有毒です。一般的に、トウダイグサ科の植物は有毒です。
近代医療で薬用に利用されるようですが、確認はできていません。
食用にはできません。危険です。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵に似たものはありません。    
  
写真は「葉と細長い枝」、「雄花」、
「花序(蕾)」、「果実」と「幹」
の5枚を掲載
ヒトツバハギ
葉と細長い枝
ヒトツバハギ
ヒトツバハギの雄花
ヒトツバハギ
花序(雄花の蕾)
ヒトツバハギ
ヒトツバハギの果実
ヒトツバハギ
ヒトツバハギの幹