ホドイモ(塊芋)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

ホドイモ(塊芋) マメ科ホドイモ属
学名:Apios fortunei

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■特徴・分布・生育環境
長さ2mほどになるツル性の多年草です。
日当たりのよい林縁に自生します。
もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からのご連絡で、ある谷戸の奥で、2015年に初めてその自生を確認できました。
2016年に、ある保全緑地でごく少ない個体数が確認されています。

葉は、奇数羽状複葉で小葉は普通5枚ですが、3枚や7枚のこともあります。
小葉は長さ4〜7cmほどで、基部は卵型、葉先は鋭三角形状に少し伸びています。

花は初秋〜秋で、葉腋に狭円錐状の花序を出します。
花冠は黄緑色〜淡黄色ですが、よく見るとウサギの耳のようにごく小さく突き出している1対の花被片が淡赤紫色なのが特徴です。
花は、花径1〜1.5cmほどのマメ果ですが、やや複雑な形状をしていて、中央に半円形に曲った花被片(竜骨弁)が目を引きます。
普通はその下側に、先端が小さく2裂した淡赤紫色の花被片(翼弁)が覗いています。

マメ果は長さ7cm前後のとても細長い筒状です。
地下には長い地下茎があり、長さ3cm前後の紡錘型の塊根がところどころにできます。この塊根は食べられます。

その一方で、栽培される仲間(同属)の「アメリカホドイモ」(学名:Apios americana)は、塊根をジュズ状に多くつけ塊根自体も2倍ほど大きい。
収穫量が多いので青森県などで農業栽培されています。
「アメリカホドイモ」の花は赤紫色で、普通は円錐塔状になります。花穂や花色はクズに似ています。明治中期に北米から持ち込まれた外来種です。
  
日本各地〜から中国大陸・台湾に分布します。
多摩丘陵では自生は極めて稀です。

■名前の由来
漢字では「塊芋」で、根がところどころで肥厚して紡錘型の「塊(かたまり)」になるので,「芋(いも)」にたとえて当てられたようです。

しかし、漢字の「塊」の読み(音訓)には「ほど」はありません。
さらに、江戸時代までの多くの本草書などには「塊芋」としては現れていないようです。(大和本草に現れている「ホト兒」がホドイモであるとする説があります)

どうも、「ほど」の名の由来ははっきりとはしていないようです。
漢字名の「塊芋」は、明治時代以降に当てられたものであるようです。
なお、「ジャガイモ」の地方名のひとつに「ホドイモ」があります。このような地方名のひとつが名前となった可能性があります。

青森県などで栽培され食用にされている「ホド」は「アメリカホドイモ」で、明治時代中期に持ち込まれて栽培されるようになったものです。

■文化的背景・利用
詩歌にはその名前は現れていないようです。

江戸時代までの多くの本草書にもその名は現れていないようです。
ただ上述のように、江戸時代の大和本草に現れている「ホト兒」をホドイモとする説もあるようです。
塊根は食べられますが、塊根の数が少ないこともあって一般的ではありません。
飢饉などの際に「救荒植物」として利用されていた可能性はあります。

青森県などで「ホド」と呼ばれて栽培もされているものは、上述のように明治時代中期に持ち込まれた北米原産の「アメリカホドイモ」です。
在来の「ホドイモ」とは異なり、塊根をジュズ状に多くつけ、大きさも2倍ほど大きい。
栄養価が高く米国では「インディアン・ポテト」と呼ばれて北米のネイティブアメリカンの食料源であったようです。

■食・毒・薬
塊根は食べられますが、一般的ではありません。葉や種子などは食用にはできないようです。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には、似たものはありません。
上述のように、青森県などで栽培されている外来種「アメリカホドイモ」は仲間(同属)ですが、花色が赤紫色ですし、花穂の様子がかなり違います。    
  
写真は「花穂と花(前面)」、「花穂と花(後ろ)」
と「葉」の3枚を掲載
ホドイモ
ホドイモの花穂と花(前面)
ホドイモ
ホドイモの花穂と花(後ろ側)
ホドイモ
ホドイモの葉