■特徴・分布・生育環境
中国原産で、江戸時代の初めに渡来した外来種です。
落葉の低木で高さ2〜3mくらいです。
幹は、根元から叢生し、太くはならず樹皮は白っぽく平滑です。
春に、葉に先駆けて枝を取り囲むように長さ1cmほどの濃赤紫色の蝶型花を枝一杯につけます。
花柄がないために、花が枝からいきなり出ているように見えるのが特徴です。
葉は大きく、花が終わるころに出て、径10cmほどの円形に近いハート型です。
花後に、長さ10cmに近い比較的大きなエンドウ豆のような豆果をいくつか垂下させ、秋に淡褐色に熟します。
この木は発芽力が強いようで、多摩丘陵では人家近くに半野生化した個体が時々見られます。
■名前の由来
インドなど南アジアに自生し、有名な染料として使用する「蘇芳の木」で染める「蘇芳色」のようで花が美しいとの命名のようです。
ただ、蘇芳の木は仲間(同属)ではなく近縁種で花色は黄色です。
「すほう」または「すおう」は「蘇芳」の日本語読みのようです。
■文化的背景・利用
「蘇芳」は、古い時代から染料として用いられてきているマメ科の低木の中国名で、材の芯や莢に赤色色素を含んでいます。
媒染剤によって「赤」、「赤紫」や「黒っぽい紫」に発色します。
この染料は、奈良時代には既に渡来していて、貴族によって愛好されたようです。
「蘇芳色」は、アルカリ性溶液で媒染した「黒みがかった(または青みがかった)赤色」のことです。
平安時代の今昔物語に、この色が現れているとのことです。
また、江戸時代に貝原益軒によって編纂された「大和本草」に、「花木」として現れる「紫荊(スハウギ、はなすはう)」は、このハナズオウであると言われています。
■食・毒・薬
有毒であるという報告はないようです。漢方では、樹皮を「紫荊」として解毒やはれ物に効能があるとしています。このような場合食用にするのは避けるべきでしょう。
■似たものとの区別・見分け方
北中米から観葉植物として持ち込まれたアメリカハナズオウがありますが、花が小さく、なによりも葉が暗紫色なので容易に区別できます。
セイヨウハナズオウは10mを越える高木で叢生せず、花は似ていますが樹皮が褐色で淡い褐色のスジがはいります。
いずれも多摩丘陵では見かけたことはありません。
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写真は「花」、「花枝」、「葉」、 「葉と幹」と「果実」の5枚を掲載 |
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ハナズオウの花 |
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ハナズオウの花枝 |
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ハナズオウの葉 |
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ハナズオウの葉と幹 |
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ハナズオウの果実 |
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