■特徴・分布・生育環境
草丈40cm〜50cmほどになる多年草です。
日の余り当たらない林床に生育します。
夏〜初秋にかけて、長い花茎をやや斜上させて、茎の先にかなり細い穂状花序を伸ばして、小さな花をまばらにつけます。
花は、唇形で淡いピンクです。かなり小さく長さ1cmほどですが基部の半分は筒状の緑色のガク筒なので花弁そのものは長さ5mmほどです。
唇形花の上部の花弁は短く、下部の花弁は3裂していて突き出しています。
花冠の先は開きます。ただ、径5mmほどです。
葉は対生(対になってつく)で長さ10cmほどの卵型〜長楕円形で、粗い鋸歯(葉の縁のギザギザ)があり、先端はとがります。
果実は、イノコヅチの果実に似ていて、先端がカギ状になっていて衣服などにくっつきます。
日本では1科1属1種の孤独な存在です。
ただ、日本各地から東アジアの温帯〜暖温帯に広く分布しています。名の通り、後述するように全草が有毒です。
多摩丘陵では、個体数が少なく、現在では限られた地域に少ない個体数を確認できているだけです。
■名前の由来
蠅(ハエ)取り紙や便所のウジ殺しなどに使ったことから「蠅毒草」の名があります。
■文化的背景・利用
昔から、根を煮詰めたり、すりおろしたりした汁を細長い紙に塗って(蠅取紙)を作り、天井などからぶら下げてハエを粘着させ駆除するのに使いました。
また、全草を便所に投げ込んでウジを殺すのにもつかったので「ウジゴロシ」の別名があります。
40〜50年ほど前に合成殺虫剤が普及するまで鮮魚店などによくつかわれていました。
ただ、中国で編纂され江戸時代に日本にもたらされた著名な博物誌「本草綱目」にはその名は現れてはいないようです。
また、江戸時代に貝原益軒によって著された「大和本草」では、薬草類としてではなく雑草類として蝿取草(ハイトリクサ、はへどくさう)の名が現れています。。
■食・毒・薬
強い毒性があり、ハエに限らず多くの昆虫類の駆除に有効であることが実験で確認されています。
漢方では疥癬や水虫に効能があるとしているようですが、毒性が強いので民間での利用は避けるべきです。
■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵に似たものはありません。
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写真は「花」、「全体」と「葉」の3枚を掲載 |
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ハエドクソウの花 |
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ハエドクソウの全体 |
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ハエドクソウの葉 |
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