フシグロセンノウ(節黒仙翁)         
多摩の緑爺の「多摩丘陵の植物と里山の研究室」

フシグロセンノウ(節黒仙翁) ナデシコ科センノウ属
学名:Lychnis miqueliana

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■特徴・分布・生育環境
山地〜丘陵地の谷筋の落葉樹林などの疎林の林縁〜林床に自生する多年草です。
日本固有種です。

茎をほぼ垂直に立てて上部で茎を分けます。
花期には高さ50cm〜80cmほどになります。

夏〜初秋(多摩丘陵では7月〜8月)に、それぞれの茎頂で花柄を分け(集散花序)て平らな傘型に花穂をつけます。
ただ、花は一斉には開かずに順に1〜4花が開花していきます。

花は朱橙色です。その色から遠くからでも目立ちます。
花は平開(花の上面は平ら)します。

花径は5cm前後で花弁は5枚です。
花弁は幅広で、花弁に間に僅かに隙間がある。
ただ、花弁は相互に接していることもある。稀に僅かに重なります。

葉は狭楕円形〜卵型までいろいろです。葉先は鋭三角形状です。対生(対になってつく)です
葉の長さは10cm前後あります。ただ、もっと短い葉もあります。

葉や花柄が分岐する茎の部分が少し膨れていて節状になります。この部分が暗褐色になります。

なお、単に「フシグロ」の名がある越年草もあります。花が径5mm前後と小さい。節の部分が暗褐色です。
近縁のマンテマ属です。

また、「センノウ」は、後述の通り外来種で盛んに園芸栽培されてきています。よく似ています。

本州〜九州に分布します。
多摩丘陵には、1980年代までは時に自生が見られたようですが2010年には確認できなくなっています。

■名前の由来
鎌倉〜江戸時代に渡来し、観賞用に広く栽培されてきている「センノウ」に似ていることからセンノウです。
なお、センノウの名は京都嵯峨の仙翁寺に見られたことから「仙翁」(せんのう)とされたという説が一般的です。

「仙翁」の字からは何か故事来歴がありそうに思えますが、古典などには特に現れていないようです。

「節黒」は、茎の節の部分(葉や花柄が付く部分が少し膨れる)が暗褐色を帯びることからです。

■文化的背景・利用   
江戸時代の園芸書である「花壇地錦抄」に「黒節(くろふし) 中末秋。花くれないなり。」とされているのはフシグロセンノウであるとされています。
まは、同じく江戸時代の本草書「本草綱目啓蒙」にその名が現れているとされます。

万葉集を始めとする多くの歌集には詠われていないようです。

■食・毒・薬
有毒であるという報告はないようです。ただし、このような場合は未確認であるだけであることが多いので要注意です。
もちろん食用にするという報告もありません。
薬用にもしないようです。

■似たものとの区別・見分け方
多摩丘陵には、自生しているものでは似たものはありません。
しかし、鎌倉時代〜室町時代に中国から持ち込まれて園芸栽培されているセンノウや中国大陸〜朝鮮半島に自生しているマツモトセンノウに加えて、江戸時代を中心に作出されたこれらの園芸品種が多くあり、見分けるのは結構難しい。

センノウは、上述の通り中国から持ち込まれて観賞用に園芸栽培されていて、多くの品種があります。
花色は鮮かな朱色です。
花弁の先端は5〜7浅裂しているのが普通です。

〇マツモトセンノウは、普通は花色が深紅色です。また、花弁の先に細かな欠刻(縁の細かいギザギザ)があるのが普通です。
なお、九州の阿蘇山に自生があるという説もあります。
マツモトの名の由来は諸説がありますが、はっきりとはしていません。    
  
写真は「花」と「葉」の2枚を掲載
フシグロセンノウ
フシグロセンノウの花
フシグロセンノウ
フシグロセンノウの葉