■特徴・分布・生育環境
腐生(菌従属栄養)植物です。植物体全体に葉緑体を欠き、全体が白色です。
日光が遮られるような林床に自生します。
見た目の印象からは判り難いのですが、イチヤクソウの近縁(別属)種です。
東京都の中島氏からのご連絡で、2015年に始めて自生を確認できました。合わせて近縁種との見分け方もご教示いただきました。
このように葉緑素を欠き全体が白色の植物は比較的多く、また名前も紛らわしいところがあります。
・単なる「ギンリョウソウ」は近縁ですが別属です。
・この仲間は「シャクジョウソウ属」ですが、名前が似た「ヒナノシャクジョウ」はヒナノシャクジョウ科で全く別種です。
・タシロランも同様に全体が白色で草姿も似て見えますが、こちらはラン科で全く別種です。ラン科には葉緑体を欠くものは結構多い。
・ヤッコソウも全体が白色ですがヤッコソウ科で全く別種です。こちらは腐生植物ではなく寄生植物です。
初秋〜秋に、白色の茎を立て、狭鐘型〜壺型の白色の花を茎頂に下向きに1個つけます。普通は一か所に数株が出ます。
確認し難いのですが、花の中央にある円柱状の柱頭(メシベ)の先は黄褐色です。近縁(別属)のギンリョウソウでは、この部分は青色です。
草丈は、10cmほどです。果期には20cmほどになります。これは花期には花は茎に強く下向きにつき、果期には上向きになることによります。
茎葉は鱗片状で膜質で、茎に張り付くように数個つきます。
果実は径15mmほどの偏球形で、茎頂に上向きにつけます。
さく果(いくつかの小部屋に別れた乾いた果実)です。
近縁(別属)のギンリョウソウでは果実は下〜横向きにつき、液果(多肉質で水分が多い果実)です。
日本各地、東アジア、インド、南北アメリカ大陸などに分布します。
多摩丘陵では、2015年現在では自生は稀です。
■名前の由来
花色が白色なので銀、花の様子を竜の首に見立てて「銀竜草」とされたというのが一般的です。
「秋の」は文字通り秋に花をつけるので、春〜夏にかけて花をつける「銀竜草(ギンリョウソウ)」に対比させたものです。
別名の「銀竜草擬(ギンリョウソウモドキ)」は、ギンリョウソウによく似ていることからです。
■文化的背景・利用
万葉集や多くの和歌集には詠われていません。文学的にも記載はないようです。
江戸時代の本草書のひとつ本草綱目啓蒙にその名が現れています。
■食・毒・薬
有毒であるか無毒であるかは確認されていません。まあ、この草姿では食べようとは思いません。
薬用に利用するという報告もないようです。
食用にはしません。食欲もわかないと思います。
■似たものとの区別・見分け方
全体に白色で葉緑素を欠く植物は、数科にわたっていて、見た目では判断し難いところがあります。
○この仲間のシャクジョウソウでは、茎頂で花柄を分けて多くの花(多くは4〜6個)を房状につけます。アキノギンリョウソウ(別名:ギンリョウソウモドキ)では茎頂に1個の花をつけます。別属のギンリョウソウでも花は茎頂に1個です。
○アキノギンリョウソウ(別名:ギンリョウソウモドキ)とギンリョウソウは、草丈や花容がよく似ています。花が下向きなので確認が困難なのですが、アキノギンリョウソウでは、花の中心部にある円柱状の花柱(メシベ)の先は黄褐色であるのに対して、ギンリョウソウでは青色です。
また、ギンリョウソウの花期は春〜夏の終わりごろですが、アキノギンリョウソウでは花期は初秋〜秋です。
なお、この2種の見分け方は東京都の中島氏に教えていただきました。
○ギンリョウソウは、多摩丘陵でも点々と報告記載があるのですが、まだ確認できていませせん。
○ヒナノシャクジョウは、アキノギンリョウソウの仲間の属名(シャクジョウソウ属)と紛らわしいのですが、全く別種のヒナノシャクジョウ科です。ギンリョウソウなどと同様に葉緑体を欠き全体の白色です。ただ、紡錘状の花の先端が小さく(径3mmほど)開くと花被片の基部が橙色です。草丈は5〜10cm(時に15cm)ほどで、茎の先に紡錘状の花を、放射状に密に数個つけます。
ヒナノシャクジョウは、分布域的には多摩丘陵にも自生する可能性がありますが未確認です。
○全く別種(ラン科)ですが、多摩丘陵にはギンリョウソウなどとやや似たタシロランが稀に自生します。花をよく見るとラン科であることが判るのですが、見た目は似ています。まだうまく確認できていません。
なお、タシロランは草丈が30cmほど(時に50cm)で、茎の上部の周囲(総状花序)に10個近くの小さな花をつけます。アキノギンリョウソウやギンリョウソウの草丈は10cmほど(時に20cmほど)です。
○他に、マヤランの仲間のサガミランモドキも花色は白緑色ですが花容がまるで違うので、容易に区別できます。
○ヤッコソウは、見た目がヤッコが踊っているように見え、アキノギンリョウソウやギンリョウソウよりも一回り小さく、草丈5〜6cmほどです。全く別種のラフレシア科の寄生植物(シイの仲間の根)で、分布も四国〜九州〜沖縄なので、多摩丘陵には自生はありません。
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写真は「花期の全体1」と「花期の全体2」 の2枚を掲載 |
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花期の全体1 |
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花期の全体2 |
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