多摩丘陵の植物相の概況 −2013年現在−

■かつては豊かだった植物相もこの50年ほどの間に多くの種が地域絶滅に瀕しています。
 里山林風景
多摩丘陵(たまきゅうりょう)は、1960年代から始まった開発の嵐によって、50年あまりの間に丘は削られ谷戸は埋められて市街地化し、河川・池沼改修によって水辺はコンクリートで固められ、豊かだった自然環境のおよそ90%以上が消滅しました。かっては多様だった植物種の多くが現在(2010年現在)では個体数を大幅に減らし地域絶滅の危機に瀕しています。
また、かっては広義の里山(人の生活に密接に結びついていた丘陵地と小河川などによる浸食により数百メートルにも及んで樹枝状に複雑に切れ込んだ細長い谷底型低地(谷戸または谷津田)の耕作地と果樹園など)として維持管理されてきていましたが、 燃料革命(電気・ガスの普及)や化学肥料の普及や、それらによる経済的な価値の低下や後継者の不足によって、そのほとんどが放棄され荒廃するに至っています。

■植物相の「概要」は次の通りです。

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1.多摩丘陵の極相  
2.樹木相は比較的豊か
(1)落葉広葉樹の高木は樹種は多く豊かですが、個体数が少ないものもある
ただ、林床の低木・矮小低木は、樹種が少なく、また、自生は稀で個体数がごく少ないものもある。
(2)林縁の落葉広葉樹の低木は樹種も多く豊かであるが個体数の少ない樹種も多い
(3)木本性ツル植物は比較的種類は少ない
(4)常緑広葉樹の高木は樹種が少ない
(5)常緑広葉樹の亜高木・低木も樹種が少ない
(6)針葉樹は樹種が少なく個体数も少ない
(7)外来種の木本
(8)2010年代には稀少種となっている低木
(9)この30年前より以前(2010年現在)に地域絶滅したと推定される低木

3.草本相は比較的豊か。ただ、個体数が少ない草本も多い。
(1)林床の草本は比較的種数は少ない
(2)この30年ほどの間(2010年現在)に個体数を大きく減らしている林床草本
(3)比較的明るい林縁の草本は比較的豊か

4.比較的明るい林縁の草本で、2010年現在では自生地が限られていて個体数が少ない草本
5.比較的明るい林縁の草本で、2010年現在30年ほど前から稀少種となっている草本
6.比較的明るい林縁の草本で、2010年現在30年ほど前から急速に個体数を減らして稀少種となっている草本
7.比較的明るい林縁の草本で、2010年現在で、5年ほど前から確認できなくなっている比較的明るい林縁の草本
8.この30年前より以前(2010年現在)に地域絶滅したと推定される比較的明るい林縁の草本

9.比較的日当たりのよい草地の草本は豊か
10.2010年現在30年ほど前から既に稀少種となっている比較的日当たりのよい草地の草本
11.この30年ほどの間(2010年現在)に個体数を大きく減らしている比較的日当たりのよい草地の草本
12.もう30年以上も前に地域絶滅したと推定される草地の草本

13.比較的日当たりがよく、やや湿性のある草地の草本も比較的豊かであるが少なくなっているものもある
14.水湿性地や水辺の草本は種数は多くない
(1)水辺など水湿性地の草本ではこの30年ほどの間(2010年現在)に個体数を大きく減らしているもの
(2)水湿生地に生育する草本でまだ個体数が比較的多いもの

15.外来種の侵入の状況

16.周辺の山地の低山帯には自生するが、多摩丘陵では確認できていないもの

17.シダ植物の植生概況

18.僅かに残された地域の植物相は、現状(2010年現在)では大きく次のように分けられます
(1)地域の僅かな人やボランティア団体などによって維持管理されている里山林や耕作地  
(2)放棄され荒廃した里山林や耕作地
(3)放棄された耕作地が30〜50年生の林地に遷移した区域
(4)杉や檜などの人工林−林野庁による拡大造林計画に沿った林地
(5)竹林
 

1.多摩丘陵の極相

多摩丘陵の極相(植生が遷移していって最終的に安定した状態になった際の植物相)は、スダジイ、シラカシ、アラカシやアカガシなどを優占種とする常緑広葉樹林であると推定されています。里山のコナラやクヌギなどを優占樹種とする落葉広葉樹林は、遠い昔に人の手によって作り変えられたものと推定されます。
シラカシ


2.樹木相は比較的豊かです。

(1)落葉広葉樹の高木は樹種も多く豊かですが、個体数の少ないものもある
ただ、林床の低木・矮小低木は、樹種が少なく、また、自生は稀で個体数がごく少ないものもある。

(a)よく維持管理されている里山林は明るい広葉樹林で、クヌギやコナラといった落葉広葉樹が中心で、時にヤマザクラの古木が混じります。

(b)林縁に多い落葉高木としては、ウワミズザクラ、ホオノキ、エゴノキ、イヌシデ、ミズキ、クマノミズキやアカメガシワがあります。

(c)林縁で個体数が少ない落葉高木としては、アカシデ、クマシデ、イヌザクラ、マルバアオダモ、カラスザンショウ(実生木は多い)、ハリギリ(実生木は多い)、ヤマコウバシ、リョウブ、アワブキ、キリ、ネムノキ、ヤマボウシ、クリ、ニガキ、アオハダ、ネジキ、コクサギ、イイギリ、エノキやムクノキがあります。なお、多摩丘陵では、イロハモミジ、イタヤカエデ、エンコウカエデやオオモミジなどといったカエデの仲間(カエデ科)は個体数は少なく、樹種も少ない
また、湿性地を好むハンノキの仲間も少なく、ケヤマハンノキを稀に見る程度です。
なお、ゴマギは絶滅が危惧されている状態で、極めて稀に保護植栽されているだけです。

(d)林床の低木・矮小低木は樹種は少なく個体数も少ない。ヤブコウジ、コウヤボウキ、マンリョウ、アオキやオニシバリはやや多いが、カラタチバナ、ヤマツツジやウメガサソウは自生地域が限られ、個体数も少ない。
なお、ウメガサソウは、2014年に東京都の中島氏からご連絡いただき、ごく限られたせまい場所でごく少ない個体数を確認できました。


(2)林縁の落葉広葉樹の低木は樹種も多く豊かであるが個体数の少ない樹種も多い

(a)林縁に多い落葉低木としては、ムラサキシキブ、ヤブムラサキ、ガマズミ、コバノガマズミ、ニワトコ、キブシ、クサギ、ゴンズイ、ウグイスカグラ、コゴメウツギ、クロモジ、クサイチゴ、モミジチゴ、ヌルデ、ヤマハゼ、ヤマウルシ、ヤマグワやヒメコウゾがあります。

(b)林縁にも少ない落葉低木としては、ノイバラ、オオフジイバラ、テリハノイバラ、ウツギ、ヒメウツギ、マルバウツギ、ニガイチゴ、ヤマツツジ、クサボケ、イヌザンショウ、マルバハギ、ヤマハギ、ミツバウツギ、ヤマアジサイ、タマアジサイ、ツクバネウツギ、ハナイカダ、マユミ、ツリバナ、ヤマブキ、カマツカ、ナツグミ、トウグミ、ナワシログミ、マンサク、サワフタギ、アブラチャン、ネジキ、コクサギ、ヤブツバキやウメモドキなどがあります。
なお、2013年に東京都の中島氏から、ヒトツバハギの自生をご連絡いただき、その存在を始めて知りました。2014年現在、多摩丘陵での自生は極めて稀です。
ヒメウツギは、植栽されているものは比較的よく見ますが、2015年現在では自生のものは確認できていません。
2015年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からのご連絡で、ある谷戸奥でだけでコガンピの自生を確認できました。



(3)木本性ツル植物は比較的種類は少ない

(a)比較的個体数の多い木本性ツル植物には、アケビ、ミツバアケビ、フジ、サルトリイバラ、テイカカズラやツタウルシがあります。ただし、よく管理された里山林では、除伐されるために稀です。

(b)比較的個体数の少ない木本性ツル植物に、アオツヅラフジ、ノブドウやエビヅルがあります。
2014年に、東京都の中島氏により、ある林縁でコウモリカズラの自生が確認されています。他には、ある都市部の里山公園で保護植栽されているだけです。
アオツヅラフジ


(4)常緑広葉樹の高木は樹種が少ない

(a)個体数が多い常緑高木は、シラカシとアラカシ程度です。

(b)個体数が少ない常緑高木としては、シロダモがあります。

(c)個体数が稀な常緑高木では、スダジイやアカガシの大径木がごく稀に残されているだけです。


(5)常緑広葉樹の亜高木・低木も樹種が少ない

(a)個体数がやや多い亜高木・低木には、ネズミモチ、イヌツゲ、ヒサカキ、ヒイラギやツルグミがあります。

(b)個体数が少ない亜高木・低木には、ヤブツバキ、ナワシログミやシュロがあります。


(6)針葉樹は樹種が少なく個体数も少ない
アカマツやモミを稀に見る程度です。


(7)外来種の木本
トウネズミモチがよく見られ、トウジュロやヒイラギナンテンがごく稀に見られます。また、時に、ハナズオウが半野生化しています。


(8)2010年代には稀少種となっている低木
カラタチバナ、ヤマアジサイ、マルバウツギ、ヤマツツジ、アブラチャンやヤブツバキなどが稀少種となっています。
なお、アブラチャンはある地区のある谷戸だけで、2013年に始めて自生を確認できました。アブラチャンは多摩丘陵周辺の低山地では普通です。
2015年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からのご連絡で、ある谷戸奥でだけでコガンピの自生を確認できました。
2015年に、ある保全区域でだけでメギの自生を確認できました。ただ、有用樹として古い時代に植栽されたものである可能性があります。


(9)この30年前より以前(2010年現在)に地域絶滅したと推定される低木
タンナサワフタギ、フジバカマ、ヤシャブシやミヤマシキミなどがあります。また、木本性ツル植物、ヤマブドウやサンカクヅルなども地域絶滅したと推定されます。


3.草本相は比較的豊か。ただ、個体数が少ない草本も多い。
外来種の侵入状況は後述します。
クマガイソウ
(1)林床の草本は比較的種数は少ない
さらに、放棄された林地では、ほとんどの場合ササ(アズマネザサ)が侵入していて密に生育するために林床草本は極めて貧しい。

(a)比較的個体数が多い林床草本には、キンラン、ミヤマナルコユリ、ホウチャクソウ、ハエドクソウ、オモトやチヂミザサがあります。なお、時々、コクランを見かけます。

(b)個体数が少ない林床草本には、アオイスミレ、ヤマルリソウ、イチヤクソウ、フデリンドウ、フジカンゾウ、クチナシグサ、マツカゼソウ、ヤブムグラ、ヤマムグラ、ヤブミョウガやタニギキョウがあります。また、2012年に町田市の松本氏からのご報告でマヤランの自生が再確認されています。
さらに、クチナシグサは2013年に東京都の中島氏のご報告により自生が確認されました。また、2013年夏に、同様に東京都の中島氏のご報告により、個体数は少ないもののイチヤクソウ、マヤランとサガミラン(モドキ)の自生を再確認できました。
なお、ヤブムグラは2013年に東京都の中島氏からのご連絡により始めてその自生を確認できました。ヤブムグラは、もともと関東平野南部にのみ自生する稀少種です。
2013年に、東京都の中島氏からのご連絡により、多摩丘陵で始めてマツカゼソウの自生を確認できました。
ヤマルリソウは、2013年にある地区のある谷戸でだけ確認できました。その後、東京都の中島氏により2014年にある谷戸での群生を確認できました。
2013年に、横浜の唐澤氏からご連絡をいただき、キッコウハグマとキヌタソウの自生を確認できました。
2014年に、人により持ち込まれたか、あるいは、栽培されていたものが逸出したものと考えられているムサシアブミを採録しました。
2014年に、東京都の中島氏からのご連絡により、多摩丘陵で始めてタニギキョウの自生を確認できました。

(2)この30年ほどの間(2010年現在)に個体数を大きく減らしている林床草本
に、カタクリ、エビネ、シュンラン、ヒトリシズカ、クマガイソウ、ギンラン、ササバギンラン、サイハイラン、ウバユリ、ジュウニヒトエ、アキノキリンソウ、ムラサキニガナ、カシワバハグマ、キッコウハグマ、キバナアキギリ、ワダソウやキチジョウソウなどがあります。
なお、キバナアキギリは2013年に東京都の中島氏により多摩丘陵での自生を確認できました。
また、ワダソウは、2015年にもと多摩丘陵地域にお住まいのU氏からのご連絡で、ある林地でワダソウの自生を多摩丘陵で始めて確認できました。
植物体全体に葉緑体を欠き全体に白色のアキノギンリョウソウを、2015年に東京都の中島氏からのご連絡により多摩丘陵での自生を始めて確認できました。
同様に葉緑体を欠くギンリョウソウは、多摩丘陵で点々と自生の報告があるのですが、2015年現在ではまだ確認できていません。
同様に葉緑体を欠くタシロランは、多摩丘陵で3か所ほどで自生の報告があるのですが、2015年現在ではまだ確認できていません。なお、2017年に確認し採録しました。
2016年に、セリバオウレンを採録。1980年代頃までは、文献に自生の記載があるのですが、1990年代以降は、一部の植栽個体を除いて確認できなくなっています。


(3)比較的明るい林縁の草本は比較的豊か
ただし、放棄された林地では、ほとんどの場合ササ(アズマネザサ)が侵入していて密に生育するために林縁草本は極めて貧しい。

(a)比較的明るい林縁の草本は豊かで、フタリシズカ、タチツボスミレ、ダイコンソウ、イヌホオズキ、チゴユリ、チヂミザサ、ヤクシソウ、ネコハギ、ミズヒキ、ヤマホトトギス、ヤマジノホトトギス、オオバギボウシ、ヤブラン、ジャノヒゲ、オオバジャノヒゲ、ヤブジラミ、オヤブジラミ、ヤブニンジン、セントウソウ、カントウヨメナ、ユウガギク、ノコンギク、リュウノウギク、シロヨメナ、トウバナ、イヌトウバナ、ドクダミ、ユキノシタやツユクサなどがあります。

(b)比較的明るい林縁のツル性の草本で個体数の多いものに、カラスウリ、シオデ、ヤマノイモ、オニドコロやトキリマメなどがあります。


4.比較的明るい林縁の草本で、2010年現在では自生地が限られていて個体数が少ない草本
として、トモエソウ、オトギリソウ、ニリンソウ、アオミズ、ガンクビソウ、サジガンクビソウ、ヤブタバコ、コヤブタバコ、キツネノカミソリ、ヒヨドリジョウゴ、ツルニンジン、サラシナショウマ、イヌショウマ、センブリ、ヤブレガサやモミジガサなどがあります。
2013年に、東京都の中島氏からのご連絡により、多摩丘陵で始めてタンキリマメの自生を確認できました。


5.比較的明るい林縁の草本で、2010年現在30年ほど前から稀少種となっている草本
として、多摩丘陵固有種のタマノカンアオイを始めとして、オミナエシ、オトコエシ、リンドウ、スズサイコ、シオガマギク、ヒメウズ、ツルマメ、ハンショウヅル、ウバユリ、オオカモメヅル、アキノウナギツカミ、ヤマトリカブト、ツクバトリカブト、ツクバキンモンソウ、ヤマハッカ、メドハギ、ナンテンハギ、オオバノトンボソウ、ムラサキニガナ、センブリ、キカラスウリ、ボタンヅル、オケラ、マルバコンロンソウ、キバナアキギリ、ツルニガクサ、カセンソウ、ホドイモ、タチドコロ、コケリンドウ、タニギキョウやトキホコリなどがあります。
2014年に、東京都の中島氏からのご連絡により、多摩丘陵で始めてタニギキョウの自生を確認できました。意外に湿性の低い明るい場所での自生でした。
2015年に、ある里山の林縁でヒメウズの自生を確認できました。ごく少ない個体数だけです。
2015年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からご連絡をいただき、ある谷戸の林縁でコケリンドウの自生を確認できました。しかし、自生地はごく限られていて、少ない個体数だけです。
2015年に、東京都の中島氏からのご連絡により、多摩丘陵では初めてタチドコロの自生を確認できました。ごく少ない個体数だけです。
2015年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からのご連絡で、ある谷戸の奥でカセンソウの自生を確認できました。ただ、ごく少ない個体数だけです。
2015年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からのご連絡で、ある谷戸の奥でごく稀なホドイモの自生を確認できました。ただ、ごく少ない個体数だけです。
2015年に確認していたトキホコリを2018年に採録しました。


6.比較的明るい林縁の草本で、2010年現在30年ほど前から急速に個体数を減らして稀少種となっている草本
に、ホタルカズラ、ウマノスズクサ、イチリンソウ、スズメウリ、カラスノゴマ、キツネノカミソリ、マムシグサ、ウラシマソウ、ミミガタテンナンショウ、シュロソウ、ヤブツルアズキ、コマツナギ、コナスビ、オケラ、ナンバンギセルやカノツメソウなどがあります。
2014年に東京都の中島氏により、確認できなくなっていたウツボグサの自生を確認できました。ただ、自生地は極めて限られています。


7.2010年現在で、5年ほど前から確認できなくなっている比較的明るい林縁の草本
に、オドリコソウ、イカリソウ、ヤマエンゴサク、ジロボウエンゴサク、センボンヤリ、ハタザオなどがあり、地域絶滅してしまった恐れがあります。
しかし、2015年にある谷戸で、少ない個体数ですが、ヤマエンゴサクの自生を確認できました。
また、2015年に、ある保全区域でセンボンヤリの自生を確認できました。ただ、個体数はごく少ない。
2015年に、ツルカノコソウの自生を確認できました。個体数は少ない。


8.この30年前より以前(2010年現在)に地域絶滅したと推定される比較的明るい林縁の草本
に、ヤマブキソウ、セツブンソウ、フクジュソウ、フシグロセンノウやキクザキイチゲがあります。また、キケマン、ミヤマキケマン、ヤマキケマン、クサノオウやアズマイチゲが1970年以前には自生していた可能性があります。


ヤマブキソウ

9.比較的日当たりのよい草地の草本は豊か
です。ただし、放棄された草地や畑跡地などでは、種数は少ない。

(a)比較的日当たりのよい草地の草本は豊かで、キンミズヒキ、キュウリグサ、ハナイバナ、ヌスビトハギ、イタドリ、スベリヒユ、エノコログサ、カラスビシャク、オニタビラコ、ハハコグサ、ヨモギ、カタバミ、オカトラノオ、ホタルブクロ、ヤマホタルブクロ、アカネ、ヘビイチゴ、アキノタムラソウ、キランソウ、ホトケノザ、キツネノマゴ、ツルボ、カキドオシ、カントウヨメナ、ユウガギク、ノコンギク、リュウノウギク、センニンソウ、ムラサキケマン、ヒヨドリバナ、トウダイグサ、ママコノシリヌグイ、イヌガラシ、カントウタンポポ、シロバナタンポポ、オオバコ、コウゾリナ、ニガナ、ジシバリ、オオジシバリ、ノアザミ、ノハラアザミ、トネアザミ、ワレモコウ、ナズナ、アキカラマツ、イヌタデ、ハナタデ、イノコヅチ、ヤハズソウ、スイバ、ギシギシ、オヒシバ、メヒシバ、ヤエムグラ、ススキやチガヤなどがあります。

(b)比較的日当たりのよい草地のツル性の草本で個体数が多いものに、カナムグラ、ヘクソカズラ、ヤブガラシ、シオデ、スイカズラやクズがあります。

(c)比較的日当たりのよい草地の草本で個体数が少ないものに、カラムシ、ヤブマオ、メヤブマオ、アカソやクサコアカソのイラクサ科の植物があります。また、ミツバツチグリ、キジムシロ、ヤブヘビイチゴ、ゲンノショウコ、ウリクサ、オケラ、ハナウドやシシウドも個体数は少ない。
ただし、2013年〜2016年には、以前よりもカラムシを見ることが増えています。
2017年に、メヤブマオを採録しました。多摩丘陵では、まだ確認できていません。
2014年に、東京都の中島氏からご連絡いただき、意外な場所でクララの自生を確認できました。長い間、確認できなくなっていました。
2015年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からのご連絡で、2015年にある谷戸奥でだけでオオヒナノウスツボの自生が確認されています。


10.2010年現在30年ほど前から既に稀少種となっている比較的日当たりのよい草地の草本
に、アマナ、タチフウロ、コバノカモメヅル、イヌゴマ、ワニグチソウ、ツルマメ、アキノウナギツカミやチダケサシなどがあります。


11.この30年ほどの間(2010年現在)に個体数を大きく減らしている比較的日当たりのよい草地の草本
に、スミレ、ノジスミレ、アカネスミレ、ヒメスミレ、マルバスミレ、アリアケスミレ、コスミレ、アオイスミレ(林床)、ニオイタチツボスミレ、ナガバノスミレサイシンやヒゴスミレといったスミレ類があります。スミレの仲間で、現在もよく見るのは、タチツボスミレとニョイスミレだけになっています。
また、ヤマユリ、ウマノスズクサ、ナンテンハギ、ヤマハッカ、チチコグサ、キツネアザミ、ミヤコグサ、ツリガネニンジン、ヒメハギ、ナルコユリ、アマドコロ、ノダケ、タカトウダイ、ナツトウダイ、ガガイモ、タツナミソウ、オカタツナミソウ、コミカンソウ、ミミナグサ、ノミノツヅリ、ノミノフスマ、ツルカノコソウ、アキノノゲシ、ツメクサやエノキグサなどがあります。


12.もう30年以上も前に地域絶滅したと推定される草地の草本
に、キキョウやカワラナデシコがあります。
1980年代に入る頃には地域絶滅したとされているオキナグサを、2016年に採録しました。


13.比較的日当たりがよく、やや湿性のある草地の草本も比較的豊かであるが少なくなっているものもある
です。ただし、放棄された場所などでは、種数は少ない。

(a)比較的日当たりがよく、やや湿性のある草地の草本で個体数が多いものに、ニョイスミレ、カントヨメナ、ユウガギク、シラヤマギク、ヒガンバナ、ノカンゾウ、ヤブカンゾウ、コオニタビラコ、ヤブタビラコ、コハコベ、ミドリハコベ、ウシハコベ、カヤツリグサやタマガヤツリなどがあります。

(b)比較的日当たりがよく、やや湿性のある草地の草本で個体数が少ないものに、ツメクサ、ツルカノコソウ、ウド、ホタルカズラやカセンソウがあります。
自生はなかったされているサクラソウを、2016年に採録しました。
2016年にある保全区域でツルカノコソウに自生を確認できました。ただ、個体数はごく少ない。


14.水湿性地や水辺の草本は種数は多くない。また、個体数も多くない。


(1)水辺など水湿性地の草本ではこの30年ほどの間(2010年現在)に個体数を大きく減らしているもの
に、コケオトギリ、ミゾカクシ、オギ、ガマ、コガマ、ヒメガマ、ツリフネソウ、キツリフネ、ウマノアシガタ、ヨゴレネコノメやハンゲショウがあります。
ホタルイやサンカクイなどのイグサの仲間は、既に地域絶滅していると推定されます。
なお、ツリフネソウは、湿性のある谷戸の林床にも自生している(谷戸に樹木が侵入したが残されたと推定されます)ことがあります。
1970年代には、既に自生は稀であったようですがオグルマが自生していたようです。

また、2015年以降に以下の通り、ミツガシワ、アサザ、オオバタネツケバナ、ミズオトギリ、クサレダマ、ミズオオバコ、サワギキョウ、オオニガナ、ヌマトラノオ、アギナシ、サワヒヨドリを確認できています。ただ、自生地はごく限れれていて、個体数も極く少ない。

ミツガシワやアサザが遠い昔には自生していた可能性があります。2015年現在ではごく一部に保護植栽されているだけです。
2015年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からのご連絡で、始めてオオバタネツケバナの自生を確認できました。ただ、もともと多摩丘陵では自生は少なかったと推定されます。
ミズオトギリが、ある里山公園で保全されているのを2015年に確認できています。
2015年に、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏からのご連絡で、ある谷戸奥でクサレダマの自生を確認できました。なお、もう2ヶ所ほどの里山公園でもごく少数が保全されています。
また、もと多摩丘陵地域にお住まいだったU氏により、ある谷戸奥で2014年頃にミズオオバコの自生が確認されています。なお、2015年に多摩丘陵の東南端の里山公園でミズオオバコが保全されているのを確認できています。さらに、2016年に多摩丘陵の東北端の保全水田に少ない個体数を確認できています。
2015年〜2016年にかけて、1970年代以降は確認できなくなっていたサワギキョウが、ある保全区域でごく少ない個体数ですが保全されているのを確認できました。
2015年に、1990年代以降は確認できなくなっていたオオニガナが、ある保全区域でごく少ない個体数ですが保全されているのを確認できました。
2016年に、多摩丘陵北西端の保全湿田と東南端の保全湿田で、ヌマトラノオの自生を確認できています。観察報告のあるイヌヌマトラノオを掲載。
2017年に、ある保全水湿地に保護されているアギナシを採録しました。多摩丘陵の他の場所では未確認です。
2017年に、保全されている水湿地でサワヒヨドリを確認して採録しました。

(2)水湿生地に生育する草本でまだ個体数が比較的多いもの
に、セリ、ヨシ、オモダカ、ミゾソバ、ミズタマソウ、ヤブマメ、キツネノボタン、ケキツネノボタン、タガラシ、イボクサ、タカサブロウ、アゼナ、コモチマンネングサ、ウマノミツバ、ムラサキサギゴケ、サギゴケ、コナギやタネツケバナがあります。


15.外来種の侵入の状況(2015年現在)
アメリカセンダングサ

(a)林縁周辺にまで侵入している外来種では、ハルジオン、ヒメジョオン、ブタナ、ノゲシ、オニノゲシ、ヒメオドリコソウ、オオイヌノフグリ、アメリカフウロ、アメリカイヌホオズキ、セイヨウタンポポ、オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ、ミチタネツケバナ、アメリカセンダングサ、コセンダングサ、コシロノセンダングサ、オオニシキソウ、シロツメクサ(クローバー)、オランダミミナグサ、マルバフジバカマ、セイタカアワダチソウ、ハキダメギク、セリバヒエンソウ、ジュズダマやニワゼキショウなどがあります。

(b)まだそれほど侵入していない外来種として、セイヨウジュウニヒトエ、イモカタバミ、ムラサキカタバミ、ヒルザキツキミソウ、アカバナユウゲショウ、ナガボノヒナゲシ、ホソバノオオアマナ、トキワツユクサやコゴメバオトギリがあります。

(c)近年になって個体数を減らしている外来種に、アレチノギク、ベニバナボロギクやヒレアザミがあります。
 
(d)草地や路傍などに侵入している外来種として、ヨウシュヤマゴボウ、アメリカオニアザミ、チチコグサモドキ、タチチチコグサ、ウラジロチチコグサ、ウスベニチチコグサ、ワルナスビ、オオアラセイトウ、ムラサキツメクサ、コバンソウ、ヒルガオ、コヒルガオ、ジュズダマ、ヘラオオバコ、オオブタクサ、キクイモ、センダングサ、アメリカセンダングサ、コセンダングサ、コシロノセンダングサ、セイタカアワダチソウ、アレチヌスビトハギ、エゴマ、オオニシキソウやコニシキソウなどがあります。
 
(e)水湿性地に侵入している外来種として、オランダガラシ(クレソン)、アメリカアゼナやアメリカタカサブロウがあります。


16.周辺の山地の低山帯には自生するが、多摩丘陵では確認できていない木本や草本

草本では、アズマイチゲ、キケマン、ミヤマキケマンやクサノオウ、あるいは、低山帯にも稀に見られるエイザンスミレやアケボノスミレは、多摩丘陵ではかなり以前から確認できていません。

木本では、フサザクラ、ハンノキの仲間のヤシャブシ、あるいはクスノキ科のダンコウバイ、また、ノリウツギ、ズミ、オオカメノキなどは、多摩丘陵ではかなり以前から確認できていません。
さらに、カエデ(モミジ)の仲間、イタヤカエデ、ウリカエデ、ウリハダカエデ、メグスリノキ、チドリノキ、ミツデカエデ、ヒトツバカエデなども未確認です。


17.シダ植物の植生概況

多摩丘陵には、シダ植物は70種以上が自生しますが、主として湿性のある陰地や半陰地に生育するメシダの仲間、イノデやベニシダなどオシダの仲間や、オウレンシダやホウライシダの仲間のイワガネソウなど、多くは生育できる環境が激減していて、2010年現在では種数も個体数も大きく減ってきています。

ただ、日当たりのよい所に生育するスギナ、カニクサ、ワラビ、フユノハナワラビやゼンマイなどは比較的よく見かけます。


18.僅かに残された地域の植物相は、現状(2010年現在)では大きく次のように分けられます

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(1)地域の僅かな人やボランティア団体などによって維持管理されている里山林や耕作地  
(2)放棄され荒廃した里山林や耕作地
(3)放棄された耕作地が30〜50年生の林地に遷移した区域
(4)杉や檜などの人工林−林野庁による拡大造林計画に沿った林地
(5)竹林  


(1)地域の僅かな人やボランティア団体などによって維持管理されている里山林や耕作地

キンラン  
(a)よく維持管理されている里山林は、
高木層としては「コナラ」や「クヌギ」を優占樹種とした明るい落葉広葉樹林です。時にヤマザクラの古木が残され、林床はよく整備されていて、侵入しやすいササ(多摩丘陵ではほとんどアズマネザサ)などは除伐されていて明るい疎林地になっています。
かっては、これらのコナラ・クヌギ林は30年周期ほどで伐採され「薪炭」材・シイタケ栽培のホダ木、落葉は腐葉土・堆肥作りや、多少湿性のある陰地の林床はシイタケ栽培などに利用されていた林地です。

林床には低木はほとんどなく、オニシバリ、カラタチバナ、コウヤボウキやマンリョウなどの矮小低木が稀に見られる程度です。シラカシ、アラカシ、ヒサカキやイヌツゲなどの常緑樹は実生木のうちに除伐されています。

林縁の落葉広葉樹の高木・亜高木は、上述の通り樹種も多く豊かです。

林縁の落葉広葉樹の低木も、上述の通り樹種も多く豊かです。

林縁の常緑樹はかなり少なく、上述の通り樹種が少ない。
ただし、隣地が放棄された林地であったり寺社林であったりする場合には、シラカシやアラカシなどを優占樹種とする常緑広葉樹林となっていることがほとんどです。

なお、よく管理された里山林では木本性ツル植物は稀で、樹種としては上述の通り比較的種類は少ないのですが、除伐されていて成木は稀です。

林床の草本は、上述の通り比較的種数は少ない。
明るい林縁の草本は豊かで、上記の通りです。しかし、上記の通り、個体数の少ないものやこの30年ほどの間に個体数を大きく減らしているものもあります。
外来種の侵入状況は、上述の通りです。

よく維持管理された里山林周辺ではツル性植物は上述の通りですが、ほとんど除伐されています。、

(b)広義の里山の耕作地では、一部でボランティア団体などによって保護耕作されている地域がありますが、多くは放棄されて草地や湿性地となっています。

まだ維持管理(定期的な草刈など)されている耕作地周辺の草地や土手の草本は豊かで、上述の通りです。
アマナ
ただし、上述の通り、個体数の少ないものやこの30年ほどの間に個体数を大きく減らしているものもあります。

まだ維持管理されている耕作地周辺の水湿性地や湿性のある場所の在来種の草本は比較的豊かで、上述の通りです。
しかし、上述の通り2010年現在30年ほど前から急速に個体数を減らしている草本もあり、河川や池沼の改修によって自生地が大きく減ったことが大きな要因になっていると推定されます。
外来種の侵入の状況は、上述の通りです。

(c)なお鶴見川水系の堤防では、ハナウド、スイバ、ギシギシ、イタドリ、クズやオオバコを比較的よく見かけます。また、ガマ、ママコノシリヌグイ、メドハギやウマノスズクサ、木本ではネムノキ、クサギやノイバラを稀に見かけます。
鶴見川水系の堤防には外来種が多く、ヘラオオバコ、ヨウシュヤマゴボウ、アメリカセンダングサ、コセンダングサ、コシロノセンダングサ、ヒルガオ、コヒルガオ、オオイヌノフグリ、ミチタネツケバナ、ウラジロチチコグサ、オオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ、ブタナ、オオアラセイトウ、オオニシキソウやセイヨウタンポポなどがよく見られます。なお、コゴメバオトギリやセリバヒエンソウは、2010年現在ではまだ個体数は少ない。


(2)放棄され荒廃した里山林や耕作地  ウワミズザクラ  
 
(a)放棄された里山林では、
 
高木層としてシラカシやアラカシが優占樹種になりつつあり、ウワミズザクラ、エゴノキ、ホオノキ、イヌシデ、アカメガシワ、ミズキやクマノミズキなどの落葉高木・亜高木が混在していることが多い。稀に、イヌザクラ、マルバアオダモ、オオモミジやリョウブが見られます。
時に木本性ツル植物の成木を見かけます。主に、フジ、サルトリイバラ、アケビやミツバアケビです。

林縁から林床には、ササ(アズマネザサ)が侵入して密生していることがほとんどです。また、しばしば隣接する竹林からモウソウチクやマダケが侵入しています。
 
低木層にもイヌツゲやヒサカキなどの常緑樹が侵入しています。林縁にもヒイラギやシロダモなどの常緑樹が見られます。ツルグミ、ネズミモチやトウネズミモチも時々見られます。
林縁には落葉樹の低木もあり、上述の通りです。
 
林床は暗く、ササが侵入していることもあって、草本は稀です。時に、矮小木本のヤブコウジを稀に見かけます。
湿性の高い薄暗い林床にはシダ植物が自生していることが多く、種子植物は稀です。

林縁にもササが侵入していることもあって、草本は稀で、ほとんどの場合ツル植物が絡みついています。カラスウリ、ヤブガラシやクズが多く、低木を覆ってしまい枯死させることがしばしばあります。
よく手入れされる小道の脇の明るい林縁ではツル植物があり、ヤマノイモ、オニドコロ、シオデ、ヘクソカズラ、スイカズラやサルトリイバラが多く、稀にトキリマメ、ノササゲ、アオツヅラフジやエビヅルを見かけます。
よく手入れされる小道脇には丈の低い草本が時に自生していて、カヤツリグサ科のタガネソウやカンスゲ、稀に、サジガンクビソウ、ガンクビソウ、ヤブタバコ、コヤブタバコやヤブランなどを見かけます。また、ごく稀に、タマノカンアオイ、ツクバキンモンソウ、ツルニンジン、ハンショウヅルやヤブレガサなどを見かけます。

放棄された耕作地では、

畑地跡ではツル植物が覆っていることが多く、クズ、カナムグラやヤブガラシが多い。他に、イタドリ、ヌスビトハギ、トウダイグサ、キツネノマゴやタケニグサが見られ、やや陰地には、ヤブラン、ジャノヒゲ、オオバジャノヒゲ、オヤブジラミ、ヤブジラミやヤブニンジンが見られます。また、外来種ではオオアレチノギク、ヒメムカシヨモギ、オオニシキソウ、セイタカアワダチソウ、アメリカセンダングサ、コセンダングサ、ヒルガオやコヒルガオを比較的よく見かけます。
湿性の高い放棄された田や湿性地などには、ほとんどの場合、アシ(ヨシ)が自生していて、稀に、セリ、ミゾソバ、ヤブマメ、ヤブツルアズキ、キツネノボタン、ケキツネノボタンやタガラシなどを見かけます。


(3)放棄された耕作地が30〜50年生の林地に遷移した区域

ミズキ
比較的立木の密度が高く樹冠がほぼ覆われていて陽光の入らない林地です。

相対的に成長が早い落葉広葉樹が優占して成立した林地で、常緑樹はごく稀なのが特徴です。林縁には、以前から残されていたヤマザクラの大径木があることが多い。
亜高木や中層木を欠いているのも特徴です。
樹種は、比較的多様で、ミズキ、ホオノキ、イヌシデやエゴノキなどが多い。ごく稀に、林縁にエノキやアカメガシワが見られます。
低木層はまばらであるのも特徴で、クロモジなどの低木やウワミズザクラの幼木などがまばらに見られます。また、常緑のシラカシやイヌツゲなどの幼木もまばらに見られます。
林床は暗く、草本はごく稀です。


(4)杉や檜などの人工林−林野庁による拡大造林計画に沿った林地

1950年代末ごろから推進された林野庁による拡大造林計画に沿って、それまでの林地を皆伐して、スギやヒノキを植林したと推定される林地です。
多摩丘陵のところどろに、そのような林地が散在しています。

外材に押されて経済的な価値が相対的に低下したために放棄されていて、間伐や枝打などが行われていないために、立木の密度が高くなっていて、モヤシ木や枯損木・風倒木が目に付きます。
そのため、林床は暗く、他の低木や草本は稀で、林床は表土が流されていて荒れていることがほとんどです。


(5)竹林

多摩丘陵には、比較的多くの竹林が残されています。しかし、その多くは放棄されています。その結果、竹が密に生え過ぎ、枯損竹が折り重なっているのが普通です。
竹林は、モウソウチク林とマダケ林です。ごく稀に、ハチクがあります。
モウソウチクは節に1本の環があるのに対して、マダケでは節の環は2本です。なお、モウソウチクは、江戸時代に中国から渡来したとされています。

よく手入れされた竹林は、竹の生育密度が低く、俗にカラ傘をさして歩けると言われます。
いずれにしても、竹林の林床は竹の枯れ葉が敷き詰められていて、低木や草本はごくごく稀です。

モウソウチク林は、タケノコの採取・販売、あるいは竹材が肉厚なため竹炭焼に利用されてきています。

マダケは、竹材が薄く相対的に軽いために、農業用材として重用されてきました。また、地鎮祭や七夕などにもつかわれます。
なお、マダケのタケノコは、モウソウチクとは異なり、多摩丘陵では6月に出ます。食べられますが、余り美味しくはないようです。